人々の心と身体を育む街づくりの新たな視点
千葉大学予防医学センターの研究チームが、日常生活における環境とウェルビーイングの関連性を探るために行った調査が注目を集めています。この研究は、公共スペースや飲食店など、私たちが普段訪れる場所が、どのように瞬間的および長期的なウェルビーイングに影響を与えるのかを明らかにし、今後の都市計画に新たな視点をもたらすものです。
研究の背景
近年、健康の概念は病気がないことだけではなく、心の豊かさにも焦点が当てられています。特にウェルビーイングは、瞬間的な快適さと長期的な生活の満足度の両方を考慮に入れた重要なテーマです。しかし、日本におけるウェルビーイングに関する研究はまだ未開拓な部分が多く、高まる関心に対して十分な知見が欠けていました。
研究の成果
2022年4月から5月にかけて、柏の葉エリアに住む273名の成人を対象に、調査を実施しました。参加者は日常の経験を記録するスマートフォンアプリを使用し、場所の快適さや不快さ、その時の気持ちに関する900件以上のデータが収集されました。この結果、公共空間や飲食店、文化・スポーツ・教育施設といった環境が、ウェルビーイングに、瞬間的にも長期的にも有意な影響を与えることが示されました。
特に、リラックスできる自然環境やクリーンでコミュニケーションがしやすい場面が、ポジティブな感情に各種関連していることが明らかになりました。調査の結果は、「誰でも利用可能なオープンスペース」など無理なく利用できる公共空間が、住民のウェルビーイングに寄与する重要な要因であることを示唆しています。グラフも併用しながら、具体的な要因ごとに分析された内容が論文として発表され、街づくりの基本的な参考データとして活用される予定です。
今後の展望
今後の都市計画においては、本調査の結果を踏まえ、公私の機関が協力し、ウェルビーイングを促進する環境設計を進めるべきです。例えば、公共交通機関や移動空間の設計においても、利便性だけではなく、心地よさを重視した空間づくりが求められます。
千葉大学予防医学センターではさらなる研究を進め、柏の葉エリアに住む人々の心と身体の健康を多世代にわたって向上させるための環境や行動についての知見を蓄積していく予定です。ウェルビーイングがより一層重視される社会に向けて、実践的な知識とデザインが必要です。
この研究は、OPERA採択事業の一環としてまちづくりに資するものとして進められています。今後の展開に期待が寄せられています。
用語解説
- - 瞬間的ウェルビーイング: 日常の経験に対する即時的な感情反応を指します。
- - 長期的ウェルビーイング: 長い間にわたる人生の満足度や意義を含む概念です。
- - 経験サンプリング法: 繰り返しデータを収集する縦断的手法で、リコールバイアスを抑制します。