社内IT環境の実態とその影響
昨今、デジタルトランスフォーメーション(DX)が進む中、企業の社内IT環境の健全さが企業運営に与える影響が改めて注目されている。DXER株式会社が実施した実態調査によると、社内ITの問題が従業員一人あたり年間147時間、約18営業日に相当する時間の損失を生んでいることが判明した。この状況は、従業員の生産性を直接的に損なうだけでなく、企業全体の業績に悪影響を及ぼす可能性を秘めている。
調査概要
本調査は、DXERによる「シスクル」サービスの一環として、経営者300名と正社員1,000名を対象にインターネットで実施された。調査期間は2026年7月21日から22日まで。結果として、動作が遅い端末やツール不足などが原因で、従業員たちが感じる労働時間のロスが浮き彫りになった。これを経済的観点から見れば、一人あたり年間約44万円、従業員100名の企業では約4,400万円にも達するという。
社内IT環境の問題点
調査によると、62.4%の従業員が改善が必要だと認識しつつも、その要望を上げていない現状が示された。特に、定期的な満足度調査を実施していない経営者が多い中で、従業員の不満を把握できていないことが明らかになった。社内IT環境の質は、システムの障害のように明確に表れるものではないため、見えにくい問題として蓄積されていくのだ。
従業員の時間ロスとその実態
調査によれば、従業員の57.4%が社内IT環境の不備により週に1時間以上の時間を失っていると回答。さらに、週3時間以上のロスが発生していると感じる従業員は38.0%にも上り、特にその影響が大きいことが示されている。また、時間ロスが週6時間以上である従業員の69.3%が自分の業務成果に悪影響があると実感しているという。
成果の可視化と改善への道
多くの従業員がIT環境の改善を要望していない背景には、自らの困難を声に出さない文化も影響している。特に、団体行動や意見表明が少ない日本社会において、経営者と従業員の間に意識のギャップが生じやすい。従業員が具体的な問題を抱えていても、それを適切にコミュニケーションできない状況が続いているのだ。
また、経営者側の投資優先度も問題となっている。AIや自動化ツールの導入が先行する一方で、ヘルプデスクやITサポートの強化は後回しにされがちだ。このため、AIを活用するための基盤構築が後手に回っている。
社内IT環境の整備が採用活動にも影響
さらに、社内IT環境は従業員の採用や離職にも影響を及ぼすことが明らかになった。「社内IT環境は就職先や転職先を選ぶ際の重要基準か」との問いに、従業員の48.6%が「そう思う」と答え、特に時間ロスが大きい層では75.9%に達するという。この結果からも、IT環境が企業の魅力に大きく関わっていることが分かる。
まとめ
本調査から得られた示唆は多岐にわたる。特に、経営者は従業員からの声を待つのではなく、自ら積極的に満足度調査を行い、ニーズを把握する必要がある。また、AI投資は単独ではなく、全体として整った社内IT環境の整備と連携して進めることが重要だ。今回の結果をもとに、自社のIT環境を見直す絶好の機会を迎えていると言えるだろう。これからは、従業員が効率的かつ満足して働ける環境を構築することが、企業の競争力を高めるための鍵となるだろう。