国連事務次長が語るAIの潜在力とSDGsへの影響
2026年4月26日、日本の東京ガーデンテラス紀尾井町で開催されたエグゼクティブサミット「Tech for Impact Summit 2026」において、国連事務次長で国連大学学長のチリツィ・マルワラ氏が基調講演を行いました。講演のテーマは『外交とAI——国連の視点』であり、AI技術が持続可能な開発目標(SDGs)達成にどのように寄与できるかを探るものでした。
SDGs達成の現状とAIの可能性
マルワラ氏は、持続可能な開発目標(SDGs)の現状を厳しく分析しました。2015年に採択されたSDGsの達成見込みがわずか18%に留まっていることを指摘し、この状況を打破するためにAIがどのように活用できるかを探りました。彼は、AIがSDGsの79%のターゲットを達成する助けになる可能性があると述べましたが、その潜在力を引き出すためには、責任あるガバナンスが必要だと強調しました。
「AIの無責任な利用は、SDGsの進捗を妨げることがある」と警告したマルワラ氏。彼はAIの適切な運用が、持続可能な未来の実現に向けて重要なカギを握っていると考えています。
AI規制の4つの側面
AIの規制が必要な要素についても言及がありました。マルワラ氏は、以下の4つのカテゴリーに分けられると説明しました。
1.
データ: 収集や分析の方法、データセットの代表性など。
2.
アルゴリズム: 透明性とセキュリティを両立させる必要性。
3.
コンピューティング: データセンターの水や電力消費の問題。
4.
応用: 医療診断など、分野ごとに異なる精度要件。
これらの要素は、それぞれ異なる主体によって管理されるべきだと指摘し、規制の調和が必要であると主張しました。「アルゴリズムの選択は産業が担当し、国境を越えるデータフローは国際機関に任せるべき」と述べました。
国際協調の重要性
講演を通じて、マルワラ氏は国際協調の重要性についても強調しました。彼は「規制アービトラージ」のリスクを挙げ、AI企業が緩やかな規制を求めて拠点を移すことが問題になると警告しました。EUのAI ActとGDPRが他地域における良い参考になることを例に挙げ、グローバルな協力が不可欠であると強調しました。
国連大学の役割
最終的には、国連大学が東京に拠点を置く意義についても触れました。国連大学はAIガバナンスの国際的な枠組み構築をリードする役割を果たしており、さまざまな国際的な活動を展開しています。例えば、AI政策を統括するUNU Global AI Networkや、MicrosoftやLinkedInと共同で行う無料公開コースなどです。
結びに一つのメッセージ
マルワラ氏は、AIガバナンスの重要性を強調しつつ、英国の物理学者スティーヴン・ホーキング博士の言葉を引用して講演を締めくくりました。「AIの実現は人類史上最大の出来事となるが、リスクを回避する方法を学べなければ、最後の出来事にもなりかねない」と警告します。最終的には、協力と適応が必要であると呼びかけました。
マルワラ氏の講演は、AIを取り巻く倫理的課題やガバナンスの重要性を再認識させるものとなりました。これからのAIの活用には、技術だけでなく人間の判断と倫理が深く関わることを忘れず、持続可能な未来を見据えた議論が必要です。