進化するショッピングアプリのトレンド
最近、デジタル広告やアプリの計測、分析を手がけるAdjustが「ショッピングアプリインサイトレポート:2025年版」を発表しました。このレポートでは、世界のEコマース市場におけるショッピングアプリの最新動向や、日本市場の特徴を詳細に分析しています。特に、最近のデータによれば、企業が新たなユーザーの獲得に加え、既存ユーザーのエンゲージメントを強化する方向にシフトしていることが浮き彫りになっています。
ショッピングアプリのエンゲージメント向上に見る変化
2025年の初めまでの調査によれば、全世界のEコマースアプリのインストール数は前年比で14%減少しましたが、セッション数は2%増加しています。この結果は、全体的に新規獲得が難しくなっている一方で、既存ユーザーとのエンゲージメントが強化されていることを示しています。特に、2023年から2025年の上半期にかけてEコマースアプリのリアトリビューションシェアが29%も増加したことは、この傾向を裏付けています。
地域別のトレンド
地域別に見ると、新興市場、特に中南米では顕著な成長を記録しました。ここではインストール数が前年比で18%増加し、セッション数は27%の増加を見せています。アジア太平洋地域も堅調で、インストール数が13%、セッション数が2%の増加を達成しています。これに対して、ヨーロッパや北米などの成熟市場では減速の傾向が見られ、市場飽和や消費者行動の変化が影響しているようです。
興味深いのは、アプリのタイプによる違いです。ショッピングアプリはインストール数で76%を占めるものの、セッション数は36%にとどまっています。一方で、マーケットプレイスアプリは20%のインストール数を持ちながら、セッション数では60%を占めています。このことから、ユーザーのロイヤリティがマーケットプレイスアプリに対して高いことが読み取れます。
日本市場の独自の傾向
日本市場の特徴として、1日目の継続率が16.4%という世界最高水準であることが挙げられます。世界平均が13%である中、日本のユーザーはアプリ繰り返し利用への傾向が非常に強く、信頼性とロイヤリティの高さが際立っています。アプリインストール当日のセッション数も1.51と世界トップで、初日から活発に利用されている様子が伺えます。
また、リアトリビューションシェアも0.13から0.17に上昇し、既存ユーザーの再活性化が進んでいることも確認されました。とはいえ、新規ユーザーの獲得が減少傾向となっており、企業にとっては新規獲得よりも既存ユーザーの維持・活性化が重要な鍵となっています。
日本では、AIを駆使したリコメンド機能やパーソナライズクーポンを導入する動きが広がっています。大手小売チェーンの公式アプリやECプラットフォームが、ユーザーの購買履歴に基づいて「次回買いそうな商品」を提示するなど、日常的なアプリ利用が進んでいます。
グローバルな観点から見る市場の変化
海外に目を向けると、新興市場が牽引役となっています。特に中南米(LATAM)ではインストール数やセッション数が顕著に増加しており、APAC地域も成長しています。しかし、欧州および北米などの成熟市場では減速傾向が顕著です。
また、AIの活用も進んでおり、Shopify MagicやAppLovin SparkLabsといったプラットフォームが予測分析や自動化を通じた広告ROIの向上に寄与しています。
広告費用の動向としては、2025年第1四半期のCPI(Cost Per Install)は0.99ドルに達し、ショッピングアプリのCPIは1.01ドルと高まっています。これにより、広告戦略の見直しが求められることとなります。
これらの結果から、現代のEコマースアプリ市場は、ユーザーとの信頼構築や持続的成長が不可欠であることが明らかになっています。エンゲージメントを維持し、価値を提供し続けることが、企業の成功につながるでしょう。
デジタル広告環境の変化に対応するために、Adjustはアプリマーケティングの各段階で顧客と連携し、さらなる成功を支援するための必要なインサイトとデータの提供を行っています。今後も、まさに進化の過程にあるこの市場を注視していきたいと思います。