団地が生み出した映画の世界
2025年8月8日、集英社新書から『世界は団地でできている映画のなかの集合住宅70年史』が発売されました。著者は、団地にまつわるさまざまな視点を持つメンバーで構成された「団地団」です。この書籍は、戦後から現在にかけて団地が果たしてきた役割や、その影響が映画にどのように表現されているのかを探るものです。
団地の誕生と変遷
戦後日本の住宅事情を支えてきた団地は、単なる居住空間に留まらず、日本の文化や社会の中で重要な位置を占めてきました。また、団地は先端生活の象徴から、時代とともにノスタルジーの対象へと変化していきます。この変遷は、団地が登場する映画やフィクションにも色濃く反映されています。
本書では、団地作品に関する50回以上のトークイベントを開催してきた「団地団」のメンバーがその歴史を辿ります。特に、戦後の経済成長や家族の在り方、社会的な風潮などがどのように団地と結びついているのかを多角的に考察しています。
団地と社会のダークサイド
第一部は「団地は何を映してきたか?」というテーマで構成され、団地がどのように時代の変化を映し出してきたのかを議論します。例えば、1960年代の団地映画の誕生から1970年代における社会のダークサイドの象徴としての団地、1990年代の団地ルネッサンスに至るまで、各時代の背景と団地の関係を考察しています。
団地のクリエイティブな役割
第二部では「団地は何を作ってきたか?」というテーマが扱われ、団地がさまざまな物語を生み出す「場」としての役割に焦点を当てます。社会学的な視点、そして、映画や漫画などの創作にどのように影響を与えてきたかを紐解きます。
団地団の背景
「団地団」は2010年に結成されたトークユニットで、作家や写真家を含む多様なメンバーで構成されています。彼らは団地と映画に関する深い知識を持ち、今回はその成果を一冊の書籍としてまとめました。著者陣には、ライターの稲田豊史、写真家の大山顕、脚本家の佐藤大、漫画家の妹尾朝子(うめ)などが名を連ねています。
展示会も開催予定
さらに、本書の発表に伴い、2025年3月12日から8月24日まで高島屋史料館TOKYOで「団地と映画――世界は団地でできている」という展示会が予定されています。これにより、団地と映画の相関関係を実際に体験し、さらなる理解を深めることができるでしょう。
結論
『世界は団地でできている映画のなかの集合住宅70年史』は、団地についての新しい視点を提供する貴重な書籍です。戦後の日本を支えてきた団地が、どのように映画を通じて私たちに語りかけているのか、その魅力を知るための一助となることでしょう。ぜひ、手に取ってみてください。