御嶽山噴火からの十年とその証言
2014年9月27日、紅葉の美しいシーズンに平和な登山が一変しました。その日、御嶽山の山頂は多くの登山者で賑わいを見せていましたが、11時52分に発生した水蒸気噴火がその風景を一瞬で引き裂きました。この噴火によって、火山ガスや巨石が飛び交う中、登山ガイドとして活動する著者は危機を乗り越え、生還することができました。
この度、著者小川さゆり氏が2016年に刊行した『御嶽山噴火生還者の証言』に新たな章「噴火から十年」を加えた増補版が、株式会社山と溪谷社から2024年8月27日に発売されることが発表されました。
証言が語る真実
新しい文庫版のリリースに際しては、著者自身の体験だけでなく、他の登山者や山小屋のスタッフの証言も盛り込まれています。これにより、噴火当日の状況がよりリアルに表現され、登山者間での思いやりや連帯感が伝えられる内容となっています。巻頭には噴火当日の様子を映し出すカラー口絵が8ページ分収載され、視覚的にもその危険を感じさせる作りとなっています。
登山者へのメッセージ
加筆された新章では、著者が噴火の経験を通じて考えたことや、登山者としての心構え、そして火山列島に住む私たちに必要なものについて熱く語られています。著者は登山のリスクについて、特に若い登山者たちに警鐘を鳴らすことを目的としており、「山で悲しい思いをしてほしくない」という思いが強く込められています。これらの証言は、これから山に挑戦しようと考えている全ての人々に向けた貴重なメッセージとなるでしょう。
小川さゆり氏のプロフィール
著者の小川さゆり氏は1971年に長野県駒ヶ根市で生まれました。彼女は南信州山岳ガイド協会に所属し、日本山岳ガイド協会認定ガイドとして活動しています。登山を始めたきっかけはスノーボードのトレーニングでしたが、友人の事故をきっかけに、山の危険性と向き合う覚悟を持ち始めます。「山は楽しいだけではない」という信念を胸に、日々ガイド業務にあたっている彼女は、その経験を通じて訪れる人々に安全な登山体験を提供することを使命にしています。
書籍情報
この増補版『御嶽山噴火生還者の証言増補版』は344ページからなり、定価は1430円(本体1300円+税10%)です。さらに、火山学者・及川輝樹氏の解説も収録されており、火山についての深い知見が得られる一冊となっています。登山と自然を愛する全ての人に、ぜひ手に取っていただきたい作品です。
この証言集は単なる登山の記録ではなく、私たちが自然とどう向き合うべきかを考えさせられる内容でもあります。日本の山々に登るすべての人々に、ぜひこの想いを伝えていくよう願っています。