男性介護職における育児休業の実態と課題を探る
株式会社Blanketが運営する介護に関するコミュニティ「KAIGO LEADERS」が実施した男性介護職員を対象とした育児休業に関するアンケート調査。その結果が明らかになり、現場の声をもとに男性介護職員が抱える困難と期待される変化に迫ります。
深刻な人材不足に直面する介護現場
介護業界は人手不足が深刻であり、2023年度には介護職員数が前年から減少しました。厚生労働省の予測によると、2040年には約57万人の介護職員が不足すると言われています。この状況を打破するためには、若い人材を引き入れ、定着させるための仕組みが必要です。
その中の一つの解決策として挙げられるのが、育児休業の取得促進です。特に男性介護職員の育児休業取得が必要とされていますが、現状は思うように進んでいません。
調査の背景と目的
KAIGO LEADERSは、介護職員が主体的に良い未来を築くことを目指すコミュニティであり、育児休業に関する調査を実施しました。調査の目的は、男性介護職員の育休取得に関する実態を把握し、その向上に向けての課題を明らかにすることです。
アンケート結果の概要
調査対象は73名で、そのうち67名は男性介護職員であり、育休取得経験者は16.4%に留まりました。なくてはならない人材である男性たちが「育児休業を取得したい」と思っても、多くの壁に阻まれていることが明らかになりました。特に「人手不足による職場の負担感」と「収入減への不安」が大きな障壁であることが示されました。
また、育休取得者の多くが「子どもと過ごす時間が持てて、仕事への意識が変わった」と答えている一方で、取得できない理由を明確にすることが求められています。
現場からのリアルな声
調査結果からは、育児休業を取得しやすい環境だと感じているのは約6割一方で、39.2%が「育休は取りづらい」と感じていることも分かりました。この「取りづらい」感情の背景には、制度はあっても実際にはそれを利用しにくい雰囲気が存在していると考えられます。前例が少なく、周囲からのプレッシャーや職場の人手不足が影響していることが浮き彫りになっています。
取得できない理由と課題
多くの回答者が「制度があっても周囲の影響で取得できない」という現実を語ります。「育休を取ると言うことがタブーになっている」「人手不足で他の職員に迷惑をかけたくない」などの声が寄せられています。また、制度が周知されていないことや、取得方法が不明なことも障壁の一つです。
取得者の声と次の世代への影響
一方で「育休を取得してよかった」と語る声もあり、家族との時間を大切にすることができた経験から、育児休業の重要性が認識されています。このような経験がさらに多くの男性介護職に影響を与え、育休の取得のハードルを下げる可能性を秘めています。育休取得者の存在が他の職員にとってのロールモデルになることが期待されます。
結論と未来への展望
男性介護職員の育休取得に関するこの調査は、単なる数字ではなく、介護現場での働き方改革を促進する重要なメッセージです。制度は存在しても、実際には利用されていないという課題を乗り越えるためには、リーダーシップの発揮や、制度の周知が急務です。業界全体で人手不足を解消しながらも、職員が安心して働ける環境づくりを進めることが求められています。このような環境が整うことで、育児休業を取得することが当たり前となる未来が待っていると信じています。