はじめに
2023年度の決算期を迎え、企業による人的資本の情報開示がますます重要になっています。このレポートでは、ChatGPTと人間のコンサルタントが協力し、約4000社の上場企業における人的資本開示スコアを徹底的に評価しました。「人的資本経営の情報開示元年」とも言われる今、企業の開示内容にどのような変化が見られるのかを探ります。
調査の概要
調査対象として、日経225銘柄を含む上場企業4000社を選び、その人的資本情報の開示スコアを算出しました。スコアリングには、AIと人間双方が実施したもので、さまざまな基準に基づいて評価されています。
具体的には、以下の5つの基準に沿って4段階評価を行い、100点満点で換算しました。
1.
人的資本KPIの網羅性
2.
KPIの年度カバー
3.
取り組みの具体性
4.
戦略との連動性
5.
独自性
この基準を元に、満点を獲得した企業も多く、開示内容の充実度が企業の経営姿勢を反映していることがわかります。
評価結果の詳細
調査の結果、AIと人間が共に最高点をつけた企業は、東急不動産HD、旭化成、日立製作所、日本航空、東京電力HD、NTTデータグループの6社でした。これらの企業は、開示内容が非常に充実しているため、会社の考え方や姿勢をしっかりと伝えることができています。
一方で、日経225の平均点は、AIが82.42点、人間は75.56点となりました。特に、満点をつけた企業はAIが41社、人間が17社で、両者の評価には大きな差異が見られました。この差は、AIと人間が評価する観点の違いから生じたものと考えられます。
スコアの分析
さらなる分析において、AIと人間の評価が相関していない企業もあり、日東電工や三井不動産ではAIの評価が人間を上回りました。逆に、小田急電鉄やヤマトHDでは、人間による評価がAIを上回っています。この現象は、具体性や戦略との連動性に関するスコアに弱い相関があったことに起因していると考えられます。
上場企業の人的資本開示における課題
調査結果から得られた企業の人的資本開示に関する差異の理由は、以下の5点に集約されました。
1. 企業としての人的資本情報開示への姿勢や意欲
2. 自社の人的資本経営についてのストーリー構築力
3. 人的資本マネジメントに関する表現力
4. 人的資本情報を補完するための組織能力
5. 人的資本情報開示に対する投資や工数の確保意志
これらの要因が、企業間での人的資本開示の質に大きく影響を与えていることが明らかになりました。
今後の展望
今後我々は、人的資本開示の仕方におけるオリジナリティを重視し、投資家としての見極めが必要です。企業名や指標の比較が難しい現状では、開示内容を最大限活かし、企業の姿勢や考え方を把握できる情報源とすることが求められます。次回以降のレポートでは日経225企業以外のデータも提供し、より多角的な分析を行う予定です。
著者情報
各筆者は業界での豊富な経験を経て、人的資本経営や個々の施策に注力しています。今後の人的資本開示に関して、企業の姿勢やアプローチに着目し続けていきます。
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