プラズマ加工による金属粒子の真球化技術で高品質造形を実現
国立研究開発法人産業技術総合研究所の板垣宏知主任研究員が開発した新しい技術は、プラズマを用いて金属粒子を効率的に真球状に加工できる画期的な方法です。この技術は、主に3Dプリンティング技術である金属積層造形に応用され、造形物の充填密度向上に貢献します。
技術の背景と重要性
金属積層造形においては、粒径が10~150µmの金属粉末が使用され、その形状や粒径分布は製品の品質に直接影響を及ぼします。特に、粉末が真球に近い形状で均一性が求められ、これにより充填密度を向上させられることが、高品質な製品の鍵となるのです。従来の金属粉末はガスアトマイズ法などに依存しており、製造コストが高く、使用できる材料も限られていました。この技術の開発は、低コストで高品質な産業材料を提供することを目指しています。
プラズマ加工技術の詳細
新たに開発されたプラズマ加熱技術では、加熱中に気流と圧力を制御して金属粒子を球状に整形します。実験の結果、プラズマ処理により真円度が95%以上の球状粒子の割合が約5倍に増加しました。また、この技術により高充填密度が実現され、金属積層造形の際の間隙や亀裂といった内部欠陥を防ぐことができます。これにより、製品の信頼性が大幅に向上します。
プレスリリースの内容
この新技術は2024年10月29日からの高機能素材Weekで展示される予定です。このイベントでは、産総研のブース(サステナブルマテリアル展39-25)で技術の詳細が披露される予定です。未来の金属製品の製造方法として、このプラズマ加工技術は大いに注目されるでしょう。
今後の展望
産総研では今後、この技術を用いた金属粉末の種類をさらに増やし、高真球で均一な形状の粉末を製造するためのプロセス改善も進めていく予定です。また、品質が低下した金属粉末の再利用に関する研究も行い、市場における金属積層造形技術の普及に寄与したいと考えています。これらの取り組みは、製造プロセスのコスト削減につながり、より広範な産業界での活用を促進するものとなるでしょう。
このように、プラズマを用いることで、粉末の特性を向上させ、金属積層造形技術の進化が期待されています。将来的には、より多岐にわたる材料を用いた製造が可能となり、産業界におけるイノベーションを促進することが期待されています。