サステナブルな企業価値を高める役員報酬改革が進行中
HRガバナンス・リーダーズ株式会社が2024年6月末時点での日経225社を対象に実施した役員報酬に関する調査結果が明らかになりました。この調査は、企業の役員報酬制度の設計や開示内容を見直すための貴重な情報源となります。特に注目すべきは、将来の財務指標を用いた評価が増加している点で、企業がサステナブルな成長を目指す姿勢がうかがえます。
調査の目的と背景
この調査は、コーポレートガバナンス改革が進む中で、日本企業が役員報酬制度の抜本的な見直しを行うための視座を提供することを目的としています。報酬の設計は、経営者のインセンティブをどのように設定するかに直結します。企業にとって、自社の持続可能性を高めるためには報酬制度の再構築が不可欠です。
報酬制度の変化
調査結果によると、役員報酬の平均構成比は以下のようになっています。
- - 基本報酬:46%
- - 短期インセンティブ(STI):29%
- - 中長期インセンティブ(LTI):26%
このように、基本報酬の割合が減少し、変動報酬の割合が増加しています。特にSTIおよびLTIの合計が50%を超える結果は、企業が業績に紐づく報酬を重視する姿勢を示しています。
業績評価指標の採用状況
STIでは主に営業利益が評価指標として採用されている一方、LTIでは株主資本利益率(ROE)が最も多く用いられています。また、将来財務指標の採用企業は、STIで37.8%、LTIで37.3%に達し、昨年からの増加が顕著です。特にLTIにおいては、2022年比の採用割合が倍増していることが注目されます。
ESGと報酬制度の関係
評価項目においては、環境(E)、社会(S)、ガバナンス(G)の要素が徐々に重視されており、GHG排出量や従業員のエンゲージメントなどが重要視されています。この動きは、サステナブルな企業運営と直接的に結びついています。
クローバック条項の導入
最近では、重大な法令違反や財務情報の訂正に対して責任を追求するためのクローバック条項の導入も増えています。調査によると、STIで19.6%、LTIで41.8%の企業がこれらの条項を導入しています。これにより、ガバナンスを強化し、経営者の不正防止策が尋常でないほど進展しています。
社外取締役への株式報酬
また、監督側の役員への株式報酬も議論されています。調査対象企業の中で社外取締役に対し株式報酬を付与している企業は10.2%に及び、これは昨年比1.8ポイントの増加です。
まとめと今後の展望
HRGLの内ヶ崎社長は、企業がサステナブルな成長を維持するためには報酬制度の見直しが必須であると強調しています。日本企業は、経営理念や戦略に基づいた報酬制度を構築することで、株主価値の向上を追求しつつ、社内のエンゲージメントも高める必要があります。今後、経営者報酬に関する議論が更に活発化することが期待されます。企業は、強固な取締役会とサステナビリティ経営を追求する中で、持続可能な成長を実現することが求められています。