企業価値担保権の認知度と課題
最近、株式会社帝国データバンクが実施した調査によれば、企業価値担保権の認知度は35.1%に上昇しました。しかし、依然として半数以上の企業がこの新制度を知らないという現実が浮き彫りとなりました。これに対する認知度の向上は一歩前進ですが、制度の詳細やメリットを理解している企業は依然として少数派です。
調査の概要
この調査は、全国26,590社を対象に2025年4月に行われ、有効回答企業数は1万735社でした。認知度の中身を見ると、「制度の内容を含めてよく知っている」という企業はわずか0.6%で、「名前は聞いたことがあるが、制度の内容は知らない」は27.6%でした。つまり、名前は知っているが具体的な内容については無知な企業が多数を占めています。
認知度向上も活用意向は限定的
企業側に企業価値担保権の活用意向を問うた結果、28.6%の企業が「活用したい」と回答しました。この数値は前回より若干の増加を見せていますが、活用したい意向を示さなかった企業も多く、その理由として「自己資本で必要な資産を賄えている」「現行の融資手法で十分」といった声が挙がりました。
企業からは「担保が少なくても実力ある企業にはメリットがある」「今後の成長を目指すために検討したい」といった前向きな意見がある一方、制度への疑念や煩雑な手続き、過剰な情報開示について懸念する声も目立ちました。
企業価値担保権の意義
企業価値担保権は、従来の不動産担保や経営者保証に過度に依存しない新しい資金調達の方法として期待されています。特に、将来のキャッシュフローや無形資産を担保に取引できる点が注目を浴びています。これは、企業の総合的な価値を基にした資金調達を可能にし、金融機関による事業支援にも寄与する可能性があります。
2026年春からの施行が見込まれており、企業にとってはこの制度を理解し、有効に活用することで新たな成長戦略を描くことが期待されます。ただし、今後その詳細や運用方法がより多くの企業に認識される必要があります。
地域金融機関との連携が鍵
特に、金融機関や商工会議所を通じた制度周知が重要です。国や金融機関が制度についての具体的な情報を提供し、理解を促進することで、企業の活用意向が高まることが期待されます。現状の認知の低さを解消するためには、具体的な取り組みが求められます。
まとめ
企業価値担保権は新たな資金調達手段としての可能性を秘めています。今後の制度設計を進める上で、企業が抱える不安を解消し、理解を深めることが重要です。この制度が日本の企業の未来にどのように貢献できるか、今後の動きが注目されます。