東急不動産、リゾート事業での生物多様性評価手法開発
東急不動産株式会社とその関連会社、東急リゾーツ&ステイ株式会社は、生物多様性の価値を定量化する新たな手法を発表しました。この試験版手法は、イギリスのBiodiversity Net Gain(BNG)政策を参考にしたもので、日本で初めてリゾート事業地における自然環境の評価を可能にします。これにより、企業の事業を通じて、どれだけ生物多様性の保全に寄与できるかを数値で示すことができます。
開発の背景
生物多様性の定量化は、ネイチャーポジティブな取り組みを実現するための重要な課題です。特に、自然豊かな地域に拠点を持つリゾート事業においては、この取り組みが一層重要であると認識されています。この新たな手法の開発を通じて、以下の目標を掲げています。
1. 生物多様性に関する現状把握を行い、適切な取り組みを検討・実施する。
2. 事業を通じたネイチャーポジティブの取り組みやその効果を可視化する。
3. ステークホルダーに対してこれらの取り組みや効果を伝える。
生物多様性評価手法の具体的な検討
この手法の開発は、主に以下のステップで進められました。
ステップ1: スクリーニング評価
リゾート事業地の優先地域を選定するため、衛星画像を用いて生態系に与える影響を評価しました。その結果、最も高い評価を得た地域が「東急リゾートタウン蓼科」となりました。
ステップ2: 現地詳細調査
蓼科では、現地調査を実施し、植生や管理状況を詳しく調査しました。この調査により、植生タイプ毎の評価が進められました。
ステップ3: 定量評価
イギリスBNGでのBiodiversity Unitを参考に、日本の自然環境に適した評価手法を開発。本手法を用いて、蓼科での生物多様性の現状評価を実施しました。
ステップ4: アクションプラン策定
評価結果を踏まえ、周辺生態系の状況確認を行い、数値向上を目指す具体的なアクションプランを策定し、保全活動を推進しています。
評価結果と今後の展開
蓼科における生物多様性の評価結果は、87%という高得点を記録しました。しかし、いくつかの分野では評価基準に達していない項目もあり、外来種の影響や植生構造の単純化が課題とされました。これを受け、今後は具体的な行動に移し、生物多様性の保全活動を強化していく計画です。
サステナブルリゾート視察ツアーの実施
さらに、東急不動産は生物多様性や脱炭素、循環型社会に焦点をあてた「体感型サステナブルリゾート視察ツアー」を2025年10月から開始します。このツアーでは、参加者が実際に地域の持続可能な取り組みを体験できる機会を提供し、環境保全に寄与する企業との連携を深めることを目指しています。
結論
東急不動産グループは、環境経営を企業の基盤に据え、生物多様性の保全を強化する取り組みを進めています。この新しい定量化手法を通じて、より持続可能な未来を築くための一歩を踏み出しました。今後の活動に注目が集まります。