三重県志摩市が導入した最先端救助支援システム『3rd-EYE』
三重県志摩市消防本部が全国に先駆けて、最先端技術を駆使した救助支援システム『3rd-EYE(サードアイ)』を本格的に導入しました。このシステムは、情報収集や災害現場の状況を迅速に把握するためのものであり、消防活動の質を飛躍的に向上させることを目指しています。導入された『3rd-EYE』は、ドローン、AI、スマートグラスを組み合わせた新世代の情報共有システムです。
導入の背景と経緯
志摩市は南海トラフ地震などの大規模災害に備えるため、ドローンの活用を検討してきました。しかし、実際に災害時にドローンを円滑に活用するには、人材の育成と機器の確保が不可欠だという認識から、日常的なユースケース構築の必要が浮上しました。
その中で、志摩市消防本部は関係者や企業との議論を重ねて、消防活動にもドローンを日常的に活用する方法を模索しました。そして、志摩市とソフトバンク株式会社、株式会社ロックガレッジの協力により、『3rd-EYE』が導入される運びとなりました。
『3rd-EYE』の機能と特長
『3rd-EYE』では、ドローンが撮影したライブ映像をAIが即座に解析し、目標となる捜索者の位置を特定します。この情報は、現場指揮所や隊員のスマートグラスにリアルタイムで表示され、現場の状況を可視化します。これにより、指揮官は映像を確認しつつ、隊員に的確な指示を与えることが可能になります。
さらに、隊員が装備するスマートグラスには、視野内の情報を直接映し出す機能が備わっており、これもまた通信の効率化を図ります。現場で活動する隊員同士、指揮所との情報共有がスムーズになることで、より迅速かつ正確な判断が求められる消防活動の現場において大きな助けとなるでしょう。
災害時訓練とその成果
『3rd-EYE』導入を受けて、2024年12月10日には水難救助を想定した実践訓練が行われました。この訓練では、志摩市のリアス式海岸を含む英虞湾を舞台に、シーカヤックの事故を想定し、捜索および救助活動が実施されました。
訓練では、スマートグラスを装備した隊員が沿岸域での捜索を行い、現場指揮所ではその位置情報とカメラ映像を基に隊員に指示を送りました。また、ドローンによる上空からの捜索も行い、AIによる画像解析で要救助者の特定を行いました。これにより、目視が難しい海面上でも迅速に救助が行えるという成果が挙げられました。
市長のビジョンと今後の展望
志摩市長の橋爪政吉氏は、「南海トラフ地震による防災・減災対策は急務であり、最も重要な政策課題である」と述べ、今回の『3rd-EYE』導入を評価しました。「専門的な技術力を持つ企業と連携することで、消防活動の新たな可能性が広がることを期待しています」と強調しました。
今後、志摩市消防本部は水難救助のみならず、山林火災や建物内の救助活動など、様々な現場において『3rd-EYE』技術を積極的に活用していく方針です。私たち市民の安全を守るための取り組みとして、地域の消防隊員たちの活動がますます進化していくことでしょう。
その他の取り組み
志摩市消防本部は、消防技術の革新だけでなく、女性消防職員の活躍推進や水中ドローンの導入にも力を入れています。特に、聴覚障がい者に対する救命技術の提案など、先進的な試みで全国的に注目される存在となっています。
彼らの活動は、YouTubeチャンネル「志摩の国チャンネル」で配信されており、市民が消防隊員の日常の努力を知ることができる嬉しい内容です。
志摩市消防本部の取り組みは、地域社会に対する安全意識の醸成にも大きく寄与すると言えます。これからも技術と人の力が融合する中で、志摩市から新しい時代の消防の在り方を発信し続けることでしょう。