映画『少年と少女』が話題
2024-07-31 12:15:09

台湾映画『少年と少女』が引き起こしたトークイベントの熱気

台湾映画『少年と少女』トークイベントレポート



2024年7月21日、東京外国語大学のアゴラ・グローバル プロメテウス・ホールで行われた、台湾映画『少年と少女』上映会のトークイベントは、熱気に包まれる特別な時間となった。シュウ・リーダ監督と台湾映画史の専門家、三澤真美恵氏が登壇し、それぞれの視点からの意見や情熱を語った。これは単なる映画上映にとどまらず、観客との深い交流を生み出す貴重な場となった。

『少年と少女』は、14歳の少年と少女が成人たちの冷酷な世界に踏み込むことで描かれる青春の苦悩を扱った作品であり、台湾のアカデミー賞とも称される金馬奨や釜山国際映画祭においても高く評価されている。トークイベントでは、シュウ監督が「こんなにも多くのお客様が熱い中で足を運んでくださり、嬉しい限りです」と挨拶し、映画のテーマや制作背景について語り始めた。

シュウ監督は、本作のインスピレーションが、かつてドキュメンタリー製作の一環で出遭った一人の人間からの言葉に由来すると明かした。「この町には希望がない、この状況を映画にしてほしい」という言葉が、作り手としての使命感を芽生えさせたという。そうした背景の中、映画は台湾の抱える深刻な社会問題──地域間格差やDV、貧困、薬物問題といったテーマを扱い、観客に強いメッセージを送ることを目指した。

三澤氏は映画がもたらすインパクトについて言及し、「ノスタルジーを感じさせる作品が多い中で、この映画はその逆を行っていることが印象的です」と、台湾映画の現在のトレンドを反映した独自の視点から評価した。

特に主人公を演じる14歳のトラヴィス・フーさんとクアン・チンさんの演技は、彼らが演技未経験であったにもかかわらず、強い存在感を誇示し観客を魅了した。シュウ監督は、彼らの年齢が物語において非常に重要であると強調した。「彼らは中学生特有の青春の微細な感情を表現するために、14歳という年齢にこだわりました」と、選考の背景に迫った。また、撮影中に彼らの仲が時折険悪になったことも明かし、会場には和やかな雰囲気が流れた。

映画にはセンシティブなテーマも多く含まれており、それに対する取り組みについても語られた。「撮影にあたり、インティマシー・コーディネーターを導入し、全てのシーンについて関係者と話し合いを重ねました」とシュウ監督は説明し、演技未経験の若者たちが安全にかつ納得の上で演技に臨む環境作りの重要性を力説した。

最も議論を呼んだのが、映画のラストシーンである。観客は少年と少女の未来について想像を巡らせるが、その結末はあえて明示されていない。「少年は新しい旅立ちをでもあり、一種の死でもあるのかもしれない」とシュウ監督は語り、「それぞれの観客が自由に解釈できるように、ラストをあえて曖昧にした」と意図を説明した。

イベントの最後には、三澤氏が台湾社会の持つ「表現の自由」について深く考察し、映画が持つ多面的な魅力を改めて強調した。「台湾映画は自由な表現を許容し、多元的な視点を提示している。それこそが台湾の映画が持つ真の魅力です」と結び、会場の聴衆は大きな拍手で応えた。

この特別なトークイベントは、映画『少年と少女』が描く社会のリアリティをより深く理解する機会を与え、観客全員の心に深く刻まれたに違いない。台湾映画の持つ力強いメッセージとその独特の表現スタイルは、より多くの人に見てもらう価値がある作品であることを改めて実感させられた。


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