はじめに
慢性特発性じんましん(CSU)は、多くの患者にとって長期にわたって苦しむ疾患です。サノフィ株式会社が実施した「慢性特発性じんましんの治療実態調査」では、277名の患者を対象に彼らの疾患への理解度と治療の現状が明らかになりました。この調査では、TG-CTRL(治療コントロールスコア)12点未満の20代から50代の男女が含まれています。ここでは、調査結果の詳細をお伝えいたします。
慢性特発性じんましんとは
慢性特発性じんましんは、原因が特定できないまま続く皮膚疾患で、特に赤い膨らみとともに強いかゆみが特徴です。一般にじんましんと呼ばれる状態で、約8割は特発性とされています。この病気は、症状が現れたり消えたりしながら6週間以上続くことが確認されています。多くの患者が症状に無自覚になる傾向があり、最初に発症してから数年経過している場合、治療への期待はしばしば薄れてしまいます。
調査結果の概要
調査によると、以下のような興味深い結果が報告されました:
1.
症状の持続期間:約4割の患者が最初の症状から10年以上経過していると回答し、4人に1人は毎日症状を感じています。
2.
治療の期待:66.8%の患者が、完全に症状がなくなることと治療薬が不要になることを治療目標としている反面、多くは現実的な状況に直面しています。
3.
対策状況:わずか5.8%が特に対策を行っていないと回答し、ほとんどの患者は何らかの対策を講じています。
4.
治療に対する認識:約95%の患者がこの病気が「いつまで続くか分からない」と感じており、治療での完治が難しいとの認識を持っています。
新たな治療選択肢の不明点
興味深いことに、調査対象の93.1%は、慢性特発性じんましんにおける新しい治療選択肢である「分子標的薬」について知らないと回答しました。分子標的薬は症状のコントロールを助ける新たな手段ですが、患者さんの認識が追いついていない現状は深刻です。この治療法は、特に長期的な苦しみから脱却するための可能性を広げています。
患者の精神的な影響
患者たちは長期間のじんましんによるかゆみや症状の反復に苦しむ中で、気持ちが次第に麻痺してしまうことが多いです。調査では、92.4%の患者が「つらい」と感じながら、「まあまあつらい」と控えめな評価をしていることが目立ちました。これは、症状への慣れからくるものとも考えられます。症状への適応が「つらさ」との認識に影響を与えているはずです。
専門家のコメント
島根大学医学部の千貫祐子准教授は、慢性特発性じんましんの治療に対する患者の誤解を指摘しています。彼女は「治療には時間がかかることを理解していない患者が多く、治療に対する期待が高まっています。そのため、深刻な状態に陥っている患者も少なくありません。」という言葉を寄せています。慢性特発性じんましんの治療に関する情報は今なお不足しており、様々な新しい薬の情報を患者に届ける重要性を強調しています。
まとめ
慢性特発性じんましんの患者は、症状に長く苦しみ続けた結果、自らの状態を軽視しがちです。しかし、新しい治療法が登場し、今後の選択肢が広がる中で医師との連携を深め、適切な治療を受けることが必要です。サノフィ株式会社の「アレルギーi」サイトも、疾患に関する情報を提供し続けながら、患者の理解を促進し、質の高い生活への道筋をつける取り組みを行っています。慢性特発性じんましんに悩むすべての方が、自身の適切な治療にたどり着くことを願っています。