2025年上半期の人手不足倒産の動向
2025年の上半期、すなわち1月から6月までの期間において、「人手不足倒産」と呼ばれる現象が202件発生しました。これは、前年同期に比べて20件の増加となり、しかも2年連続で過去最多の数字を更新するという深刻な結果を示しています。この問題は特に、労働集約型の業種であるサービス業や建設業、物流業において顕著です。
主な倒産原因
今回の調査によると、人手不足倒産は主に従業員の退職や新規採用の難しさ、そして人件費の高騰が主な原因であることが分かっています。特に建設業では54件、物流業では28件と、それぞれ過去最多の件数となっています。このような業種では以前から人手不足が深刻な問題となっており、今後も業界全体に影響を及ぼす懸念が残ります。
加えて、老人福祉事業や労働者派遣業といったサービス業でも倒産が増加しています。これらは、全体の件数を押し上げる要因となっています。特に、老人福祉事業では前年より10件増加し、労働者派遣業でも同様の増加が見られます。
労働投入量の増加と生産性向上
人手不足を解消するための施策としては、単純に労働投入量を増やすことや、生産性の向上が必要です。帝国データバンクが行った調査では、デジタル投資に対する中小企業の意識が大企業に比べて明らかに低いことが示されました。特に、ITの導入やAIの活用といった方面は、中小企業では10%ポイント以上も低いという現実があります。
このため、中小企業は、人材の確保や定着を図るために、新たな施策を強化する必要があります。しかし、労働者がより良い条件を求める傾向が強まる中、転職市場は活発化しており、中小企業が人材を確保することは一層困難になると予想されています。
今後の見通し
今後も人手不足の倒産は高水準で推移することが見込まれ、特に労働集約型の業種であるサービス業、建設業、物流業では人材獲得競争がさらに激化しています。この状況において、中小企業は働き手から選ばれる企業となるための独自性や優位性を追求し、その魅力を効果的に発信することが重要です。
少子化の影響を受け、長期的には就業者数が減少するトレンドが予測されているため、企業はこの新たな労働市場の動向に対応した戦略が求められています。このように、2025年の人手不足倒産の現状をしっかりと把握し、各企業が今後の厳しい経済環境に対して柔軟に対応していくことが必要です。