被爆者の声を次世代に伝える「つむぐ」プロジェクトがスタート
2023年7月6日、株式会社朝日新聞社は株式会社中国新聞社、株式会社長崎新聞社と共同で進める「全国被爆者アンケート」プロジェクトを発表しました。これは、被爆から80年という重要な節目を迎える中、被爆者の証言を後世に残すための取り組みです。今回のアンケートには3564人からの回答が寄せられ、誕生したこのプロジェクトは「つむぐ」というテーマのもと、さまざまなコンテンツを通じて歴史的な証言を広めていく予定です。
アンケートは被爆者団体「日本原水爆被害者団体協議会(日本被団協)」の協力を得て実施され、全国約10万人の被爆者のうち約1万1千人に配布されました。特に広島県と長崎県からは多くの回答が集まり、それぞれの新聞社が地域に根ざした報道を行うこととなりました。今後はこの貴重な証言から得られる経験や思いをデジタルコンテンツにし、広く社会に発信していきます。
高齢化が進む被爆者たちの中には、自分では書けないという理由から家族が代筆した回答が目立つなど、切実な思いが伝わってきます。震える手で書かれた記述や、欄外にはみ出すほどの詳細な証言は、彼らがどれほどその思いを次世代に伝えたいかを物語っています。
新たなデジタルコンテンツも用意されています。3社それぞれがホームページで展開するこのコンテンツは、動画や写真を豊富に取り入れたリッチな内容となっており、各地域の被爆者のヒューマンストーリーやアンケートから浮かび上がる全体像を提供します。「つむぐ」を共通テーマとし、訪れる人々がさまざまな視点から被爆者の証言に触れられる仕組みが整えられています。
ウクライナやパレスチナ、そしてイランの情勢を考える現代において、核兵器の存在は未だに切実な問題です。80年前の惨劇を直接体験した被爆者の声は、ますます重要度を増しています。多くの人々がこのプロジェクトを通じて、ヒロシマやナガサキの悲劇を繰り返さないためには何ができるのかを一緒に考える機会にしてほしいと、プロジェクトチームは願っています。
朝日新聞は過去にも被爆に関する数多くの報道を行ってきました。例えば、1952年には原爆被害の初公開特集を発行し、54年には「原爆とわれわれの生活」に関する連載を開始。長年にわたり、核問題に関する課題を取り上げ続けています。今回の取り組みもその延長線上にあり、被爆者の声を継承し、記憶を未来へつなぐ重要な役割を果たすと考えています。
この「つむぐ」プロジェクトを通じて、被爆者の思いがきちんと受け止められることを期待し、彼らの証言を次世代に引き継ぐための活動が進められます。