ハリマ化成グループのトール油精留プラントが化学遺産に認定
兵庫県加古川市に位置するハリマ化成グループ株式会社のトール油精留プラントが、日本化学会の第16回「化学遺産」に認定されました。この認定は、日本の化学技術の発展に寄与した重要な歴史資料を後世に残すことを目的としています。
トール油精留プラントの歴史
このパイロットプラントは、1957年8月に設立され、トール油事業への進出を目的としていました。実際のプラント設計に必要なデータを集めるためのもので、設立後6ヶ月間にわたり試験運転が行われました。得られたデータをもとに、1958年10月には日本初のトール油精留プラントが完成しました。このプロジェクトは、創業者である故・長谷川末吉氏の志の詰まったものであり、当時の経済状況下で1億2千万円という巨額の投資を行い、企業の命運をかけた大事業でした。
環境意識の高まりとトール油の重要性
最近では、SDGs(持続可能な開発目標)への関心が高まり、環境に優しい製品の需要が増加しています。これに応える形で、ハリマ化成グループは、天然資源に基づいた製品の開発に力を入れてきました。特に、トール油は松から得られる有用物質で、多くの化学製品に利用されています。このプラントがあったからこそ、植物由来の資源を活用する技術が確立され、社会に貢献してきました。
記念碑としての役割
現在、このトール油精留プラントは記念碑として加古川製造所内に保管されており、工場見学に訪れる業界関係者や一般の人々に紹介されています。また、従業員にとっても、企業文化として「先人の進取と挑戦の精神」を引き継ぐ重要なシンボルとなっています。
国際的な認証取得に向けて
最近、このプラントで蒸留される粗トール油の調達から製品販売までの一連の流れについて、国際持続可能性カーボン認証であるISCCを2025年1月に取得しました。この認証は、環境への配慮が求められる中、全世界の顧客に向けて信頼性の高い製品供給を実現するための重要なステップとなります。今後もこのように、持続可能性に配慮した事業展開を進めていく意向です。
このトール油精留プラントの認定は、ハリマ化成グループだけでなく、日本の化学技術の未来を見据えた重要な出来事と言えるでしょう。今後の取り組みや新たな技術開発に注目が集まります。