コロナ禍が加速させた「ヌック」ブーム:RoomClipデータが示す新しい住まい方のトレンド
「ヌック」という言葉をご存知だろうか?近年、住宅設計において注目を集めている、こぢんまりとした居心地の良い空間のことだ。
「ヌック」人気の背景には、コロナ禍による生活様式の変化が大きく影響している。
住生活領域に特化した日本最大級のソーシャルプラットフォーム「RoomClip」を運営するルームクリップ株式会社は、同社が運営する「RoomClip住文化研究所」より、「ヌック」に関する投稿・検索データと実際の投稿の分析をまとめたレポートを発表した。
レポートによると、RoomClipにおける「ヌック」関連の投稿数は2019年と比較して23.36倍、検索数は22.6倍に増加しているという。
このデータは、コロナ禍によって人々の住まいに対する意識が大きく変化したことを如実に示している。
コロナ禍がもたらした住まいの変化と「ヌック」人気の関係
コロナ禍において、人々の生活は大きく変化した。外出を控え、自宅で過ごす時間が増えたことで、住まいは単なる生活空間ではなく、仕事、学び、娯楽など、多様な活動を包括的に担う場へと変化した。
RoomClip住文化研究所の分析によると、コロナ禍における住まいの変化には、以下の3つの要素が大きく影響しているという。
1.
時間の増加: 在宅勤務やオンライン授業など、自宅で過ごす時間が大幅に増えた。
2.
やることの増加: 仕事、家事、育児に加え、趣味や学習など、自宅で行う活動の幅が広がった。
3.
同時に過ごす人の増加: 家族全員が自宅で過ごす時間が増えたことで、同時に過ごす人の数も増加した。
これらの変化は、人々の住まいに対するニーズを大きく変え、その結果「家族と過ごす時間と1人で過ごす時間を両立できる空間が欲しい」という新たなニーズが生まれた。
リビングと個室の役割の変化:ヌックと室内窓が注目される理由
従来、リビングは家族みんなで過ごすための「開かれた空間」として設計されることが一般的であった。しかし、コロナ禍によって「家族と過ごす時間」と「1人で過ごす時間」の両方を確保したいというニーズが高まるにつれて、リビングの役割は変化し始めた。
「ヌック」は、リビングという開かれた空間をゆるやかに閉ざすことで、そこに「1人の時間」を確保できる空間を作り出す。
一方、個室は従来、個人が過ごすための「閉ざされた空間」として設計されてきた。しかし、コロナ禍によって家族とのコミュニケーションを重視する傾向が高まるにつれて、個室の役割も変化し始めた。
「室内窓」は、個室という閉ざされた空間をゆるやかに開くことで、家族の気配を感じながら、1人で過ごす時間を確保できる空間を作り出す。
ヌックと室内窓は、コロナ禍によって変化した人々の住まいに対するニーズを反映し、新しい「共有」の在り方を示す象徴的な存在と言えるだろう。
これからの住まい:共有と個の調和
コロナ禍は、人々の生活様式を大きく変え、住まいに対する意識にも変化をもたらした。その変化は、リビングや個室の役割の変化、そして「ヌック」や「室内窓」といった新たな空間設計のニーズを生み出した。
これからの住まいは、家族や友人と過ごす「共有」の空間と、自分だけの時間を過ごす「個」の空間が、よりバランスよく調和した空間となることが求められるだろう。
RoomClipのデータ分析は、時代の変化を反映した新しい住まい方のトレンドを示す貴重な資料である。
今後、住文化研究所は、こうした変化をいち早く捉え、人々の住まい方に関する様々な調査・分析を行っていくとしている。