富士山麓を走る観光バス、悲劇の横転事故
2022年10月13日、静岡県駿東郡小山町を走る「ふじあざみライン」で痛ましい事故が発生しました。富士山須走口五合目から下山中の大型観光バスが、急カーブで横転。乗客34名中、1名が死亡、9名が重傷、18名が軽傷という、多くの犠牲者を出した事故です。
事故原因の究明:運転手のミスと事業者の責任
国土交通省の事業用自動車事故調査委員会による調査報告書によると、事故原因は運転手の過失と、事業者の安全管理体制の不備が複雑に絡み合った結果であると結論付けられました。
運転手の過失: 運転手は、乗客の快適性を優先し、フットブレーキを多用したスムーズな減速を試みました。しかし、急勾配と連続するカーブという厳しい道路状況下でフットブレーキを多用した結果、ブレーキのフェード現象が発生。制動力を失い、バスは制御不能に陥り横転してしまいました。また、運転手はフェード現象に関する知識を持ちながらも、自分には起こらないと過信していたことも明らかになりました。
事業者の責任: 事業者と運行管理者は、運転手の危険な運転特性を把握していませんでした。また、運転手にとって初めての運行ルートであったにも関わらず、潜む危険性について適切な指示や指導を行っていませんでした。 事業者側の安全教育や運行管理の甘さが、事故を招いた要因の一つと言えるでしょう。
再発防止策:安全意識の徹底と教育の強化
この事故を教訓に、再発防止策として以下の点が強く求められています。
運転手の教育強化: フェード現象など、危険な状況への適切な対応方法について、より実践的な教育を行う必要があります。また、自己流の運転を避け、安全運転を徹底するための指導体制の構築が急務です。
運行管理の徹底: 運行前には、ルートの危険性や注意点を具体的に伝え、運転手の不安を解消する必要があります。さらに、点呼時の確認を徹底し、運転手の状態を正確に把握する体制を整える必要があります。
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事業者の責任強化: 事業者には、安全管理体制の抜本的な見直しと、運転手に対する継続的な教育・指導体制の構築が求められています。安全意識の徹底こそが、事故防止の第一歩となるでしょう。
過去の類似事故と教訓
類似の事故は過去にも発生しています。2015年には、神奈川県で大型トラックが下り坂でブレーキが効かなくなり、横転する事故が発生しています。この事故も、フットブレーキの多用によるフェード現象が原因でした。過去の事故から学ぶべき教訓を活かし、安全運転の意識を徹底し、再発防止に努める必要があります。
事業用自動車事故調査委員会の役割
事業用自動車事故調査委員会は、このような重大事故の原因究明と再発防止策の提言を行うために設立されました。専門家からなる委員会は、事故の背景にある組織的・構造的な問題点まで掘り下げ、客観的な分析に基づいた再発防止策を提案しています。今回の報告書も、今後の事故防止に大きく貢献する重要な資料となるでしょう。
まとめ:安全運転への意識改革が不可欠
今回の事故は、運転手のスキル不足だけでなく、事業者の安全管理体制の甘さが重なって発生した痛ましい事故です。再発防止のためには、運転手一人ひとりの安全意識の向上、そして事業者による徹底した安全管理体制の構築が不可欠です。この事故を教訓に、より安全な交通社会の実現に向けて、関係者全員が責任感を持って取り組んでいく必要があります。