名寄市における外来抗菌薬使用の調査結果とその意義
名寄市における外来抗菌薬の使用実態調査
株式会社ファルモが、北海道名寄市の地域薬局から収集したデータをもとに外来抗菌薬の使用実態を明らかにしました。この調査は、名寄市薬剤師会や名寄市立総合病院の協力を得て、薬剤耐性(AMR)問題が深刻化する中での抗菌薬の適正使用について焦点をあてています。
研究の背景
抗菌薬は私たちの健康に欠かせない存在ですが、その過剰使用により薬剤耐性菌が増加し、世界的な公衆衛生上の脅威となっています。世界保健機関(WHO)は抗菌薬をAccess(優先的に使うべき薬)、Watch(注意して使うべき薬)、Reserve(最後の手段となる薬)の3つに分類しており、Access群の使用比率は60%以上を推奨しています。しかし、日本では地域ごとの抗菌薬使用実態に関するデータが不足しているため、特に地方の状況を踏まえた調査が必要とされています。
調査の概要
調査は、2022年7月から2025年3月の間に札幌市内の7つの地域薬局で行われ、約30,000件の外来処方データが対象とされました。データはWHOが提唱するAWaRe分類に基づき評価され、処方日数や種類別使用量についても分析が行われました。特に注目されたのは、Access群の使用割合がわずか27%と、推奨される60%に比べて大きな乖離があったことです。
研究結果
調査結果によれば、全体の81.1%が短期処方(14日以内)であり、Access群の抗菌薬が著しく低い使用比率となっていました。これに対し、短期処方ではWatch群の抗菌薬が多く用いられ、セファクロルなどの薬剤が全処方の22.5%を占めました。また、供給不足により通常はReserve群のファロペネムが多く使用される傾向も見られ、抗菌薬の供給体制や適正使用についての課題が浮き彫りとなりました。
今後の展望
今回の調査は名寄市における抗菌薬使用の実態を明らかにし、地域のデータに基づく具体的な改善策が必要であることが示されました。AMR対策を実効性のあるものとするためには、引き続き地域の医療関係者や薬剤師会との連携を強化し、使用状況の可視化と情報共有が求められます。加えて、抗菌薬の適正使用に向けた取り組みが、今後の地域医療の質を向上させることにつながるでしょう。
出典情報
本研究の成果は、国際学術誌「Journal of Infection and Chemotherapy」に2025年10月号に掲載され、名寄市をモデルにした地域からのAMR対策の重要性を示すものとなりました。これにより、抗菌薬の適正使用は地域医療の未来にとって不可欠であることが強調されました。
株式会社ファルモについて
株式会社ファルモは、薬局と地域を結びつけることを目指す企業であり、持続可能な医療の実現に向けて様々な取り組みを行っています。
会社情報
- 会社名
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株式会社ファルモ
- 住所
- 新宿区西新宿3-20-2東京オペラシティ52階
- 電話番号
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03-5333-0553