近年、ICT教育の重要性が増していますが、特に困難を抱える子どもたちにとって、学ぶことが難しい現実が存在します。そんな中、NPO法人eboard(イーボード)が展開する「やさしい字幕」は、映像授業に新たな光をもたらしています。この取り組みは、通常の字幕よりも学習のハードルを下げるために、言葉の表現をわかりやすくした「やさしい」内容が特徴です。
昨今、全国の小学校や中学校で利用されることが増えているeboardのICT教材。特に、「やさしい字幕」は、ろう・難聴の子や日本語支援が必要な外国につながる子、発達障害のある子どもたちなど、特に学びが難しいと感じる人たちを対象に、学習の環境を整えることに力を入れています。
この「やさしい字幕」は、字幕の表示量を調整したり、文章を簡素化したりすることで、学習がしやすい環境を提供することを目指しています。国としても、この取り組みは注目されており、2021年には第5回ジャパンSDGsアワードの副本部長賞を受賞するなど、高く評価されています。
さらに最近、eboardは映像授業内の「やさしい字幕」にふりがな(ルビ)を追加しました。従来、漢字に対してカッコ付きのふりがなを表示していましたが、今後は全漢字にふりがなが表示されることになりました。これにより、学びに遅れを感じることがある子どもたちが、よりスムーズに学習を進める手助けができます。
この取り組みは、多くの企業からのボランティア支援によって支えられています。セールスフォース・ジャパンやJPモルガン・チェースなど、19の企業や団体より1,120名のボランティアの皆さんが参加し、約1年かけて制作されたのです。この協力体制は、参加者たちが教育現場の状況を理解し、未来の子どもたちに対する支援を体現した結果とも言えるでしょう。
NPO法人eboardは「学びをあきらめない社会」を目指し、主に経済的な理由や不登校、障害などで困難を抱える子どもたちに向けて、教育機会を安価に提供することを使命としています。約2,000本の映像授業と10,000問のデジタルドリルが揃い、これらは原則無料で利用可能です。また、全国の公立学校やフリースクールなど、12,000箇所以上の教育現場で導入されており、毎月20~30万人もの子どもたちに活用されています。
現代における教育のデジタル化は進んでいますが、それに伴い学ぶことへのハードルも依然として存在します。NPO法人eboardとその「やさしい字幕」は、すべての子どもたちが平等に学ぶ機会を得られるように、社会全体がその課題に取り組むためのひとつの手法を見出しています。今後このような取り組みがさらに広がり、多くの子どもたちにチャンスが訪れることを願っています。