日本の研究者グループが、薄膜生成時に見られる樹枝様の枝分かれ現象を解析する新たな手法を開発しました。この手法は、数学のトポロジー理論と人工知能(AI)を組み合わせており、将来的には次世代の電子デバイスや通信技術におけるプロセス最適化に繋がることが期待されています。これまでの薄膜生成プロセスは、顕微鏡での観察による定性的な分析が主流でしたが、高品質な薄膜の製造には、そのプロセスやメカニズムをより深く理解する必要があります。
本研究は、東京理科大学の小嗣真人教授をはじめ、岡山、京都、筑波大学の研究者らが協力して実施されたもので、樹枝状の成長過程がデバイス性能にどのように影響を与えるかを明らかにしてきました。
薄膜生成が行われる際、それはしばしば不均一な厚さや凹凸を生む原因となり、このような品質の問題が発生します。研究チームは、この枝分かれ構造の成長過程をフォーカスし、数学的理論を用いてそのメカニズムを解明しました。
具体的には、フェーズフィールド法というシミュレーション手法を使い、67,725枚の画像データを生成しました。それに続いて、パーシステントホモロジーという新しいトポロジー手法と機械学習を適用することによって、枝分かれの特徴を定量的に表現しました。最終的に、このデータを用いて材料特性やエネルギー変化との関係性を探ることに成功しました。
本研究の重要な成果は、学問の垣根を超えるトポロジーと物理、AIの融合が、新たな自由エネルギーモデルを開拓した点にあります。これは、次世代の生成技術に寄与するだけでなく、薄膜の成長メカニズムの究明に大きな一歩をもたらすものです。
今後は、この新たな手法が半導体デバイスや通信技術、センサー技術など、幅広い分野に応用されることが期待されています。特に、グラフェンや六方晶窒化ホウ素など高い電荷移動度を持つ材料が用いられる次世代デバイスの実現に向け、今回の研究成果がどのように活かされるかは注目されるポイントです。新しい薄膜生成技術によって、品質の高いデバイスが生まれる未来が待ち望まれます。