認知症徘徊事故ゼロを目指す新GPS技術の進展

新たなGPS技術が認知症徘徊事故を防ぐ

愛知県から新たに登場する認知症徘徊事故対策のインソール型GPSデバイスは、株式会社イルが開発した革新的な製品です。2024年に入り、同社は実際の特別養護老人ホームでの機能実証評価を進めており、その成果が注目を集めています。

現代の社会課題：認知症とその影響

厚生労働省の発表によれば、2025年には日本における認知症患者数は約675万人に達する見込みであり、この数値は2040年には高齢者の3人に1人にまで増加するとされております。この背景には、認知症の進行に伴う徘徊や、それによる事故のリスクが高まる現状があります。2023年には、認知症による徘徊に関連して過去最多となる19,039件の捜索願が提出され、553名が命を落ち、250名が発見されないままでした。

これらの深刻なデータは、認知症患者を持つ家庭にとって大きな社会的課題であることを示しています。株式会社イルはこの問題に正面から取り組み、インソール型GPSの開発を進めているのです。

インソール型GPSデバイスの特徴

本デバイスは、靴の中敷きとして使用可能で、従来のGPS機器を持ち歩くことが難しい認知症患者にとって、非常に実用的です。足元に装着することで、患者が外出時に必要不可欠なGPS機能を常に利用できる環境を整えています。これにより、徘徊による事故のリスクを大幅に低下させる狙いがあります。

特に、靴は日常的に使用されるものであるため、着用を忘れる可能性が少なく、徘徊による事故の未然防止に寄与します。このようなデバイスを持つことで、家族は安心して生活を共にできるでしょう。

機能実証評価の進行状況

現時点で実施されている実証評価は、2024年8月24日から10月にかけて、段階的に4つのフェーズが設定されています。第1フェーズでは屋内での性能確認、第2フェーズでは小型化のための機能改善、第3フェーズはフィードバックに基づく改良が予定されており、最終的には第4フェーズで製品の最終調整を行う計画です。

これまでの実績を基に、特別養護老人ホーム『平田豊生苑』と協力し、利用者に実際にデバイスを使用してもらっています。代表者の山本裕晃氏は、自身の介護経験からこの製品の必要性を痛感し、より良い生活環境を提供するための開発に携わった背景を持っています。

未来に向けた展望

株式会社イルは、2024年11月にクラウドファンディングを開始し、2025年初頭には正式に製品をリリースする計画です。将来的には、AIを用いた位置予測機能や自動充電機能の追加も視野に入れており、さらなる機能拡張によって認知症徘徊事故ゼロ社会の実現を目指しています。

専門の協力先として、株式会社カテックス犬山工場や公益財団法人名古屋産業振興公社などと連携を深め、実証実験の精度向上に努めています。これにより、認知症を持つ方々が安心して生活できる未来を築いていく意義深い挑戦が続いています。