貿易デジタルデータがもたらすマネロン防止と業務効率化の効果

貿易デジタルデータがもたらす変革の可能性

近畿大学（大阪府東大阪市）と株式会社NTTデータ、NTTデータルウィーブが共同で行った研究が示すのは、貿易デジタルデータによってマネーロンダリング（以下、マネロン）防止策がいかに強化され、業務効率化が実現するのかという重要な点です。この研究では、貿易デジタルデータの実用性が実証され、実際に業務の工数削減が約20%に達することが確認されました。

近畿大学とNTTデータの共同研究の背景

金融機関と地域企業の連携を通じて、現代の国際的な状況に対応し、特にロシアのウクライナ侵攻や中東の不安定な情勢がもたらす金融リスクに対処する必要があります。これに伴い、金融機関は外国為替のコンプライアンス対応を強化し、経済制裁を遵守する義務が求められています。具体的には、取引の正当性を確認するための様々なチェックが行われており、その作業量は増加しています。こうした背景を受け、3社は貿易デジタルデータの効果を測定するための研究を進めました。

実証研究の内容

この共同研究では、国内外のコンプライアンスに関する負荷測定や、貿易金融業務のデジタル化に向けたニーズを特定しました。その結果、貿易デジタルデータの活用が、金融機関や輸出入企業にとっての効率化に寄与することが確認されました。

たとえば、近畿大学は、貿易デジタルデータの活用について、ヒアリングやフィードバックを通じて、課題を洗い出し、実務的な改善効果を評価しました。また、NTTデータは、マネロン対策のソリューションを基に、金融機関のシステムでの活用を評価し、実証実験を行いました。

この過程で、貿易デジタルデータが適用されることにより、金融機関において約20%の業務効率が向上し、取引情報の正当性や価格情報の妥当性確認といった重要なチェック項目の精度が向上することが明らかになりました。

デジタルデータの利点

特に注目すべきは、デジタルデータを用いたチェックがもたらす多くのメリットです。まず、取引情報の正当性確認が可能になり、虚偽記載の特定が容易になるため、マネロン防止が強化されます。また、価格情報の妥当性を評価する際にも、精度の高いデータが手に入るため、信頼性の高い取引が実現できるでしょう。加えて、航路情報の確認プロセスもデジタルデータの活用によって高まると考えられています。

今後の展望と課題解決のアプローチ

今後、近畿大学とNTTデータは、共同研究をさらに発展させていくことを計画しています。2025年度には、デジタルプラットフォームを活用した官民共同利用のTBML対策を実現することを目指します。また、金融機関や企業、政府機関との関係を深めていく過程で、さらなる課題抽出と対策を検討していくでしょう。これにより、貿易金融分野におけるデジタルトランスフォーメーション（DX）を推進し、日本全体の金融システムの高度化を支える基盤を整え、国民生活の安全を守る貢献が期待されます。