DNPとBIPROGYが目指す物流業務の効率化
2023年11月、大日本印刷株式会社(DNP)とBIPROGY株式会社は、量子技術と人工知能(AI)を駆使した物流業務の効率化に向けた本格的な研究を開始しました。この取り組みは、国立研究開発法人新エネルギー・産業技術総合開発機構(NEDO)の「量子・古典ハイブリッド技術のサイバー・フィジカル開発事業」によって認可され、両社は今後の物流業界の変革に向けた期待が高まっています。
初期仮説検証の結果
両社は、2025年1月に初期仮説検証の成果をNEDOに報告し、その結果、厳正な審査を通過。2025年4月からは本格的な研究・開発フェーズに移行します。このプロジェクトでは、量子アニーリングや古典AI技術を組み合わせたアプリケーションの開発が進められています。
特にDNPは、配送品のピッキングに関する取り組みで、作業状況に基づくリアルタイムでの計画立案が可能なアプリケーションを開発しました。この技術により、従来の手法と比べて移動距離と作業時間を大幅に削減することに成功しています。
具体的な成果
DNPが開発した「DNPアニーリング・ソフトウェア」を使用することで、ピッキング作業の最適化が実現しました。シミュレーションの結果、移動距離が約29%削減され、他人とのすれ違い回数も約44%減少。これにより、全体の作業時間は約6.4%短縮されたのです。このような成果は、物流業務の生産性向上に大きく寄与することが期待されています。
今後の研究と展望
今後、DNPは自律走行搬送ロボット(AMR)と人間が協働して行うピッキング作業の最適化に取り組む予定です。具体的には、ロボットの制御や作業順序を管理し、作業効率を事前に検証できるバーチャルシミュレーション機能の開発が見込まれています。このアプリケーションは、物流・倉庫業界における移動距離や作業時間の短縮を実現し、業界全体の効率化に寄与するでしょう。
社会課題の解決へ
DNPとBIPROGYの共同研究は、国の生産年齢人口の減少による物流・倉庫業界の輸送力不足や、CO₂排出量削減ニーズといった社会課題の解決を目指しています。この新たな挑戦は、最新技術の活用によって社会に貢献することが期待されており、持続可能な未来への第一歩となるでしょう。
このような取り組みが進むことで、物流業務はこれからますます効率化され、我々の生活を支える重要なインフラとしての役割を果たし続けるでしょう。