研究の概要
千葉大学の研究グループは、合成開口レーダー(SAR)を用いた解析により、エジプトの西方砂漠に位置するハルガおよびダハラオアシスでの地盤沈下の発生を確認しました。このオアシスは、年降水量がほぼゼロの乾燥地域であり、生活は地下深くにあるヌビア砂岩帯水層の水に依存しています。研究者たちは、灌漑のための地下水使用がその原因と考えました。
これにより、他の乾燥地に位置するオアシスでも同様の現象が共通している可能性が示唆されています。本研究の結果は、2025年2月22日付の学術誌『Remote Sensing Applications: Society and Environment』に発表され、地下水の利用状況を理解する新たな手段となる可能性を秘めています。
地盤沈下の背景
エジプトの西方砂漠に広がるハルガおよびダハラオアシスは、主に農業が産業の中心となっており、地下水が唯一の水源です。しかし、この地域では農地の拡張や人口増加に伴い、地下水の需要が高まり、その結果、地下水位の低下や井戸の枯渇が報告されています。
それに伴い、地下水の持続的な管理が求められる中で、研究グループは地盤沈下という現象に注目しました。これまで、地盤沈下に関する研究は限られた情報しか存在せず、オアシスの地下水状況を把握できる手段が乏しい状況でした。しかし、SARを用いた地盤沈下の観測により、地下水の状態をより広範囲にわたって評価できる可能性が開けたのです。
地下水のモニタリング手法
研究は、2017年から2021年にかけての約5年間の衛星観測データに基づいており、その結果、両オアシスの地表面が年間約10mmの速度で下降していることが判明しました。この昇降の傾向は特に植生域に集中しており、現地調査によっていくつかの井戸で「井戸の抜け上がり現象」が確認されました。これにより、地下水の揚水が地盤沈下の主因である可能性が高まっています。
一方、オアシス周辺では砂丘が風によって形成されており、植生域の外部では地表面が上昇していることも確認されました。このような砂の堆積が、この地域の水の持続可能な利用に影響を及ぼしています。
今後の展望
本研究の成果は、地盤沈下に関する新しい知見を提供し、地下水利用の影響を土台に持続可能な農業の計画に寄与することが期待されています。地下水のモニタリングに関しては、地盤沈下のデータと併せてさらなる情報を統合することによって、地下水位との関連性を明確にすることが可能になるでしょう。
この研究が、エジプトのオアシスにおける持続可能な開発の一助となり、さらには世界中のオアシスの地下水管理においても応用されることを切に願います。