購買行動に見るデジタル化の進展とその影響
株式会社電通デジタルが実施した「EC・店頭をまたぐ購買行動実態調査2025」の結果が発表され、生活者の購買行動における新たな動向が示されました。この調査は2022年からスタートし、4回目となりますが、特にEC(オンライン)とオフライン(実店舗)を横断する購買の実態が明らかにされました。
調査の概要
調査は全国の20〜69歳の生活者を対象に実施され、主要な13カテゴリーに定義された29商品の購買行動が検討されました。実施期間は2025年5月22日から28日で、8,700名のユーザーにアンケートが行われました。その結果、生活者の価値観がますます多様化する中で、ECと店頭を区別なく利用する傾向が見られ、購買体験の複雑さが増していることが伺えました。
デジタル接点の増加
調査の結果、生活者が購買プロセスの各段階でデジタル接点を利用する機会が増えていることが明らかになりました。特に認知フェーズ、比較検討フェーズ、購入フェーズのいずれにおいても、それぞれのオンライン利用が増加しています。具体的には、認知フェーズでのオンライン利用が前年よりも4%増加、比較検討フェーズで6.4%、購入フェーズでも3%の増加が見られました。これに伴い、企業によるフォローやサポートという生活者のニーズも高まっていることが示されています。
企業と生活者のギャップ
生活者が求める問い合わせ対応に対する企業の実際の対応には依然としてギャップがあり、2023年の-30.8ptから2025年には-21.3ptに縮小しているものの、依然として高い乖離が存在しています。これは、企業のサポート体制が十分とは言えないことを示しており、さらなる改善が求められています。
また、「返品・交換」に関するニーズが高いことも注目すべき点です。生活者は特にこの部分に対する満足度を重要視しているようです。
リスクヘッジ購買のトレンド
調査で注目されたもう一つの特徴は、生活者がリスクを減少させるために購買行動を選んでいる点です。安全性や信頼性を重視する傾向は変わらず、特に高価格帯のアイテムに関しては口コミを複数の情報源から確認する様子が見受けられました。これは生活者が「失敗したくない」「後悔したくない」と考えていることを示しており、口コミを重視する行動が「リスクヘッジ購買」の一因とされています。
購買プロセスの変化
面白いことに、生活者の「検討」の捉え方に変化が見られ、特にダイエット・健康や美容・コスメカテゴリーにおいては「検討せずに購入した」との回答が増加しています。この現象は、SNSや動画コンテンツがレビュー・口コミに多くの影響を与え、従来の情報収集とは異なるためではないかと考えられます。
次世代技術への関心
さらに、調査では急速に増加しているライブコマースやメタバースへの関心が浮き彫りにされました。特にライブコマースでは前年比で利用意向が顕著に上昇し、多くの生活者が新たな購買体験を求めていることがわかります。また、生活者はAIサービスに対してもある程度の興味を示しており、最低限の情報を手軽に得たいというニーズが導き出されました。
結論
電通デジタルのこの調査結果は、生活者の購買行動がデジタル化の影響を受けていることを示しており、企業はこの変化に対応していく必要があります。特に、リスクヘッジへの意識や次世代技術への関心が高まっている今、企業は消費者の期待に応えられるよう、ターゲット戦略を練り直すことが求められます。今後もこの調査結果を基に、よりよいマーケティング戦略を展開することが期待されます。