冷蔵庫開発者の思い③:日立「まるごとチルド」が実現した、冷蔵室全段チルド保存の秘密
日立は、食品を美味しく保存し、さらに使いやすくするため、常にユーザーに寄り添った冷蔵庫開発を続けています。
今回は、日立冷蔵庫の鮮度保持技術「まるごとチルド」に焦点を当て、開発の裏側を、開発メンバーの言葉を通してご紹介します。
チルドルームが冷蔵室全段に!?開発のきっかけは?
従来の冷蔵庫では、冷蔵室下部に設けられたチルドルームは高い保鮮性能を持つ一方で、収納スペースが限られていました。
「チルドスペースを冷蔵室全段に拡大することで、収納量を増やし、さらにどこに置いても鮮度が長持ちすれば、ユーザーの使い勝手が向上するのではないか」
この思いから、日立は「まるごとチルド」の開発に着手しました。
低温かつ高湿を実現できた秘密
「まるごとチルド」は、冷蔵室全段を約2℃(
1)の低温で、高湿度に保つことで、食品の鮮度を長く保ちます。
この技術を実現するために、日立は従来の冷却方式を見直しました。従来は、ひとつの冷却器で冷蔵庫全体の温度を調整していたため、最も温度が低い冷凍室の温度に合わせて冷却器の温度が調整され、冷気が除湿されてしまうという課題がありました。
そこで、「まるごとチルド」では、冷蔵室専用の冷却器を搭載することで、冷蔵室のみを効率的に冷却できる構造を実現しました。これにより、より高い温度帯の冷却器となり、水分をたっぷり含んだ冷気を送り込むことで、冷蔵室内の湿度低下を抑制することに成功しました。
さらに、冷蔵室専用の大風量ファンを採用することで、冷気を効率的に循環させ、冷蔵室全段を約2℃(1)に保つことができるようになりました。
開発の裏側:想像を超える困難と、チームの力
「まるごとチルド」の開発は、決して容易ではありませんでした。
「どこに置いてもチルド温度の約2℃(
1)になるように、食品を模擬したもので、様々な場所で温度を測定し、検証を繰り返しました。従来の冷蔵庫は比較的低湿状態が当たり前だったところを、『まるごとチルド』では高湿にしなければなりません。日立として初めての挑戦ということもあり、想定外の課題も発生しました。しかし、設計部だけでなく、工場全体の関係者も巻き込み、意見交換やアドバイスをもらいながら、一つずつ課題を解決していきました。」
ユーザーへの思いやりが詰まった「まるごとチルド」
「まるごとチルド」は、ユーザーがより快適に、より美味しく食品を保存できるよう、開発チームの創意工夫と努力の結晶です。
「多くの方に、鮮度保持性能の高さや使い勝手の良さを実感していただきたい」
開発メンバーの言葉には、ユーザーへの熱い思いが伝わってきます。
(1) 周囲温度約32℃、「まるごとチルド」設定で庫内が安定したときの目安です。