2025年ユネスコ日本ESD賞受賞者の発表とその意義
2025年11月20日、ユネスコの本部があるパリで2025年ユネスコ日本ESD賞の受賞者が発表されました。今回の受賞者には、ベナン、ブラジル、パナマの三団体が選ばれました。この賞は、持続可能な開発のための教育(ESD)の優れた実践を促進し、その取り組みを広めることを目的として、2014年に設立されました。毎年または隔年で行われるこの賞は、国際的な評価を受けており、文化遺産の保護や持続可能な消費、環境教育の重要性を再確認させる機会となっています。
ユネスコ日本ESD賞の概要
この賞は、日本政府が提案し設立したもので、これまでに累計で21団体が受賞しています。2025年の賞には、実に120件もの素晴らしい提案が、59か国と9団体から寄せられました。今年の受賞は、過去最多件数である2016年と同じ数であり、今後の挑戦を促す意味でも注目されています。受賞者には、各団体に対して5万米ドルが授与されます。
受賞団体の紹介
1. ベナンの「ポべの聖なるオオクポの森の修復と革新的管理」
このプロジェクトは、ベナン南部の聖なる森「オオクポ」の文化적・精神的意義を環境保全と教育活動を通じて守ることを目的としています。地域の伝統知識にデジタル技術を組み合わせることで、地域社会による森の保護が進められ、エコツーリズムの促進にもつながっています。地域の文化の再生と経済発展を両立させるこの取り組みは、地域全体に長期的な恩恵をもたらすものとして高く評価されました。
2. ブラジルの「エデュカトゥ」
教育プラットフォーム「エデュカトゥ」は、2013年から始まり、約19,000人の教師と数十万人の生徒が関与しています。この取り組みは、持続可能なライフスタイルに関する意識を育むためにゲーム形式の教材を用い、水やエネルギー、健康といったテーマを扱っています。オープン教材による知識共有が地域社会を活性化しながら教育機会を拡充する重要なモデルとして評価されています。
3. パナマの「スパイダー・モンキー・イニシアティブ」
このプロジェクトは、パナマの農村部で、若者たちが環境保全と生態系の再生に取り組むことを目的としています。森林再生や希少種の保護をテーマにしたカリキュラムが用意されており、32校以上、1万人以上の若者が参加。その活動を通じて次世代の環境リーダーを育成し、持続可能な社会に向けた自立支援が行われています。
本賞の意義と今後の展望
このユネスコ日本ESD賞は、持続可能な開発のための教育が持つ社会的意義を再確認させる重要な機会です。日本の教育界では「持続可能な社会の創り手」を育成することが求められており、教育現場でもこの理念に基づく取り組みが進められています。日本が提唱したESDの理念が国際的に評価されている事実は、教育がいかに国際的な問題解決に寄与するかを示しています。さらに、海外の先進的な取り組みから得られる新しい知見は、日本国内における教育実践に新たな価値をもたらし、より持続可能な社会を築いていくための礎となることが期待されます。