愛媛大学で養殖魚の新たな餌となる昆虫の量産が進化

愛媛大学が新設した昆虫のラボプラント

2023年8月、大日本印刷株式会社（DNP）と国立大学法人愛媛大学は、持続可能な食料供給を目指し、養殖魚のエサとなる昆虫、ミールワームの量産に向けた共同研究をスタートさせました。この研究の一環として、2025年4月には愛媛大学内にミールワームを量産するためのラボプラントが設置され、その後同年10月からは年産3トンのミールワーム粉末を生産する本格稼働を予定しています。

さらに、ミールワームの量産とその事業化に向けた取り組みとして「昆虫マテリアル研究講座」が2025年6月1日から新たに設置され、多くの人材を育成することも目指しています。これにより、産学連携の強化が図られます。

昆虫のフンから生まれる環境浄化素材

また、DNPと愛媛大学は、ミールワームの飼育に伴い発生するフンに注目。量産によって生じるこのフンを、周辺環境を浄化する活性炭として有効活用することを発見しました。この活性炭は、空気や水を浄化するためのフィルターとしての利用が期待されており、商用化に向けた研究も進められています。

ラボプラントの設計と生産プロセス

愛媛大学の実験室内では、ミールワームの飼育自動化を実現する原理試作機が2024年9月に導入され、段階的にその運用が開始されます。このラボプラントの最大の特徴は、ミールワームの生産から加工まで一貫したプロセスを構築している点です。飼育・研究室と加工室を合わせて100m²という広いスペースの中で、多様な研究が行われる予定です。

このプロジェクトにおいて、昆虫のフンを活用した活性炭は、吸着性が高く、エコな素材として非常に注目を集めています。具体的には、ミールワームのフンを炭化することにより得られた活性炭が、一般的な水処理に使われるヤシガラ活性炭と比較しても、より優れた吸着性能を持つことが実験で示されています。

環境貢献に向けた展望

今後、DNPと愛媛大学は、このラボプラントを通じて年間3トンの環境に優しい養殖魚用のエサを生産し、さらには飼育工場への展開も計画しています。2027年度には100トン、2028年度以降には商業用プラントで年間1,200トンの生産を目指すという具体的な目標も設定されています。この量産を通じて、養殖業界全体の持続可能な発展に寄与できることでしょう。

環境浄化の観点からも、フンを用いた活性炭の開発が進められています。その用途は広がりを見せ、今後の環境保護においても大いに期待が寄せられています。愛媛大学とDNPが手がけるこのプロジェクトは、養殖業界だけでなく、環境問題の解決にも寄与する重要な取り組みとなるでしょう。