戦後80年の重みを背負った新たな歴史
7月16日、新潮社から林英一の著作『南方抑留:日本軍兵士、もう一つの悲劇』が刊行されました。この本は、戦後80年を迎える中で、これまであまり注目されてこなかった南方抑留の実態を明らかにする、重要な一冊です。
戦後最初の80年間、シベリア抑留が多くの文献に取り上げられる一方で、南方で戦争が終わった日本軍兵士たちがどのように抑留されたのかについては十分な研究がなされてきませんでした。著者の林英一は、これらの事例を整理し、具体的な証言や日記を元に南方抑留の全体像を浮き彫りにします。
著者の思い
林さんは、学生時代のインドネシアでの出来事をきっかけに、戦争経験者への聞き取り調査を行ってきた経験豊富な研究者です。本書の執筆目的は、南方で抑留された兵士の個々の体験を深く追求し、彼らがどのように苦しみ、またどのように自己を変容させていったのかを問い直すことにあります。
各章の内容
本書は以下の章から構成されています:
- - 第1章 タンジュン・プリオク港(インドネシア):復讐心に駆られたオランダ人に酷使される屈辱の日々。
- - 第2章 レンパン島(シンガポール沖):飢餓に苦しみながらも懸命にタピオカを栽培し続けた兵士たち。
- - 第3章 コカイン収容所(ビルマ):昼夜を問わず過酷な労働を強いられた過酷な生活。
- - 第4章 カンルバン収容所(フィリピン):暴力団に支配された不条理な状況。
- - 第5章 ラバウル戦犯収容所(豪軍):美談の裏に隠された陰惨な出来事。
それぞれの章で明らかにされる抑留の実態は、戦争の苦しみだけでなく、そこから生まれる個々のドラマをも描き出しています。
戦争と平和の教訓
林さんのこの研究は、現在の国際情勢や、ウクライナや中東で続く戦争の現実に照らし合わせてみても、非常に重要な意義を持っています。戦争がもたらすリアルな痛みを忘れないためにも、本書を通じて今一度、平和の大切さを再確認する必要があるでしょう。
書籍の概要
- - タイトル:南方抑留:日本軍兵士、もう一つの悲劇
- - 著者:林英一
- - 発売日:2025年7月16日
- - 定価:1,815円(税込)
- - ISBN:978-4-10-603933-1
林英一の深い視点と、数多くの元軍人たちの生の声が本書には詰まっています。歴史を振り返り、未来を考える手助けをしてくれる一冊です。