負の側面を描いた衝撃作『ブラック郵便局』
2025年2月17日、宮崎拓朗著の新著『ブラック郵便局』が新潮社から登場する。この書籍は、日本郵政グループが抱える深刻な問題を探求したもので、長年にわたる徹底的な取材の成果が結実したものだ。著者は西日本新聞の記者として、6年以上にわたって郵便局の裏側を取材し、そこで起こっている数々の腐敗や抑圧的な環境を目の当たりにした。
背景にある郵便局の現実
日本の郵便局は、私たちの生活の至るところに存在しており、日々多くの人々にサービスを提供している。しかし、その華やかな表舞台の裏には、過酷なノルマや無理な営業が強いられ、耐えられない局員がいるという負の側面がひしめいている。著者が取材を進めるうちに、関係者たちから寄せられた言葉が胸に迫る。
多くの局員が「もう限界です」と訴え、例えば年賀状の販売で個人の財産を切り崩してまで自らのノルマを達成しようとする現実が明らかになった。「今までに、年賀はがきの自爆営業で総額100万円ぐらいは身銭を切ってきた」と語る局員もいた。これらは過剰なノルマの一部に過ぎない。
深刻なパワハラと自死
さらに、上層部からの圧力は局員にとって大きなストレスとなっており、パワーハラスメントが平然と行われている。追い詰められた末、局員の中には自ら命を絶つ人も少なくないという悲しい事例も報告されている。このような現実が何十年も続いていることに驚きを禁じ得ない。
著者の情熱とその成果
江川紹子さんや塩田武士さんからもこの書籍に寄せられた推薦コメントは、事の深刻さを物語っている。「ここまでひどかったのか!」と江川さんは、自らの意見を述べており、塩田さんも残された幼い娘の手紙に怒りを覚えるほどだ。彼らが目にした事実は、ただの報道に留まらず、社会全体に警鐘を鳴らすものであることを示している。
書籍の構成
『ブラック郵便局』は全六章から成り、各章では郵便局員が直面している現実や問題にスポットを当てている。第一章では高齢者を狙うビジネスの実態、第二章では局員の「自爆」営業を強いるシステムを明かし、第三章では局長会の閉ざされた世界を暴くなど、非常に多面的なアプローチがなされている。特に、地下に潜む選挙資金の流れや内部通報者が受けた脅迫などは、著者の緻密な取材によって浮き彫りにされている。
著者について
著者の宮崎拓朗氏は1980年生まれで、福岡県出身。京都大学を卒業後、西日本新聞で長らく取材活動を行っており、特に郵政関連の問題を専門としている。彼は数々の賞を受賞しており、その報道姿勢は高く評価されている。
最後に
この作品は、私たちの日常に身近な郵便局の知られざる一面を照らし出すものだ。郵便局の職員たちの声に耳を傾けることが、今後の社会を考える上で非常に重要であることを教えてくれる一冊となるだろう。『ブラック郵便局』を通じて、私たちは目を背けてはいけない現実に直面することになる。