セレンの新メカニズム
2025-12-15 14:23:14

生体必須元素セレンの新たな安全貯蔵メカニズムを解明

セレンの新しいメカニズム発見



千葉大学大学院薬学研究院の福本泰典講師、小椋康光教授、東邦大学薬学部の鈴木紀行教授を中心とする研究グループが、セレンという生体必須微量元素の新しい貯蔵・輸送メカニズムを発見しました。この重要な研究成果が示すのは、「セレン糖」が体内でのセレンの安全な管理をサポートするキーモレキュールであるということです。この発見は、セレンの適切な栄養補充やサプリメント開発に大きな影響を与えると期待されています。

研究の背景



セレンは、抗酸化酵素などの構成成分となる重要なミネラルですが、過剰摂取や欠乏によって健康への影響が懸念されます。セレン不足は免疫系や心筋に問題を引き起こす一方、過剰は爪や神経、消化器系に悪影響を与えることが知られています。このため、適切なセレンの管理が求められています。

これまで、セレンは体外へ尿中で排泄される際にセレン糖という形で排泄されることが知られていましたが、その具体的な機能や効果については明らかにされていませんでした。この研究グループは、尿中排泄型のセレン糖が体内での主要なセレン供給・貯蔵分子であるとの仮説を立て、これを検証するための実験を行いました。

研究の成果



1. セレン糖によるセレンの補充
セレン欠乏ラットに化学合成したセレン糖を投与し、効果を評価したところ、セレン糖は特にセレンを必要とするタンパク質の濃度を効果的に回復できることが明らかになりました。この研究から、セレン糖が欠乏状態を回復させる力があり、従来の治療薬と同等の効果を示すことが確認されました。

2. 臓器内での貯蔵機能
LC-ICP-MSという手法を用いてセレン糖の臓器分布を調べた結果、肝臓や腎臓にセレン糖が存ることが判明。セレン糖はこれらの臓器においてタンパク質と結合し、安全かつ効率的に貯蔵されることが示されました。これにより、肝臓や腎臓がセレンの主な保管場所であることが示唆されました。

3. 極めて低い毒性
セレン糖はヒト肝がん細胞を用いた試験において、毒性を示さないことが確認されました。このことから、セレン糖は生体に優しい化学形態であり、反応性の高いセレン化合物を生成する酵素が知られていないことから、過剰反応のリスクも低いとされています。

今後の展望



今回の研究は、セレンが欠乏するリスクを軽減し、より安全なサプリメントや添加剤の開発につながる可能性があります。また、セレンと有害金属との相互作用に基づいて健康維持に寄与する新しいアプローチも考えられます。特に、長期の中心静脈栄養を受ける患者において、セレン糖を用いることでより安全で効率よく補充する方法が提案されています。

この研究成果は、栄養学と薬理学の新たな視点を提供するものとして注目されており、私たちの健康を守るための新しい手段となることが期待されています。今後もこの分野におけるさらなる研究が待たれます。


画像1

画像2

会社情報

会社名
国立大学法人千葉大学
住所
千葉県千葉市稲毛区弥生町1-33 
電話番号
043-251-1111

関連リンク

サードペディア百科事典: 千葉県 千葉市 千葉大学 ゼレン セレン糖

Wiki3: 千葉県 千葉市 千葉大学 ゼレン セレン糖

トピックス(科学)

【記事の利用について】

タイトルと記事文章は、記事のあるページにリンクを張っていただければ、無料で利用できます。
※画像は、利用できませんのでご注意ください。

【リンクついて】

リンクフリーです。