日揮とエナジードームの協業の背景
近年の再生可能エネルギーの普及拡大により、安定した電力供給がますます重要視されています。この流れの中で、出力変動の緩和が一つの大きな課題とされており、これに対応するために蓄エネルギー技術が注目を浴びています。特に、長期間エネルギーを貯蔵することができる「長期エネルギー貯蔵システム」(LDES)は、電力の安定供給を実現するために必要な技術の一つとして期待されています。
このたび、日揮ホールディングス株式会社とイタリアのエナジードーム社が、CO2バッテリー技術の実用化に向けて協業することとなりました。両社は、2023年10月1日付で日本市場における協業検討を目的とした覚書(MOU)を締結しました。
CO2バッテリー技術とは
CO2バッテリー技術は、主にドーム状の貯蔵容器を使用し、コンプレッサーによってCO2を圧縮して液化し、貯蔵する仕組みです。この貯蔵されたCO2は、電力需要がピークに達する時間帯に再加熱し膨張させ、それによってタービンを回して電気を生み出します。リチウムイオン電池などの蓄電池とは異なり、希少金属を必要としないため、サプライチェーンの観点でも非常に経済的であり、また経年劣化の心配もありません。
日揮は、このCO2バッテリー技術が持つ特長を生かし、長時間のエネルギー貯蔵が可能であること、また従来の蓄電池技術に比べてコストが低いことなどが、他のLDES技術に対する優位性につながると考えています。さらに、エナジードームの技術は、その安全性と安定性から広く評価されており、これにはすでに他国での成功事例も存在します。
日本市場への展開
日揮とエナジードームの締結したMOUに基づき、両社は日本国内でのCO2バッテリー商用プラントの導入に向けた具体的な検討を進めます。この取り組みは、日本の脱炭素社会の実現に向けて貢献するための重要な一歩となるでしょう。
エナジードームはイタリア・ミラノに本社を置き、革新的なCO2バッテリー技術の開発に注力している企業です。特に、イタリア・サルデーニャ島に設置された世界初のCO2バッテリープラントは、出力20MW、保存容量200MWhという大規模なもので、各国への技術普及を目指しています。
今後の展望
日揮はこのMOUを通じて、日本国内でのCO2バッテリー商用プラント導入の可能性を具体的に探り、推進していく方針です。これにより、これまで以上に持続可能なエネルギー供給の形が整備され、日本の脱炭素化に寄与することが期待されています。エネルギー業界のトレンドを受け、新たな技術が広がり、今後もその動向に注目です。