企業のAI導入と運用の新たな課題
2026年6月2日、エンタープライズテクノロジー企業であるDatadog, Inc.は、AIの運用に関する現状を探る「AI Engineering調査レポート」を発表しました。報告書によると、企業がAIを大規模かつ安定的に運用する際の最も大きな障壁は、実はAIモデルの知識や精度ではなく、運用そのものの複雑性であることが分かりました。
AI導入のスピードと複雑性の増大
現在、多くの企業がAIを活用している中、約69%の企業が三種類以上のAIモデルを利用しており、それによってエージェントワークフローの複雑化が進んでいます。本番環境におけるAIモデルへのリクエストの約5%は失敗しており、その多くがキャパシティ制限に起因していることも指摘されています。このような問題が引き起こす遅延やエラーは、最終的にはユーザー体験の低下につながる深刻なリスクです。
DatadogのChief Product Officer、ヤンビン・リー氏は、「AIの導入状況は、かつてのクラウド技術の進化と似たような課題を抱えている」と述べています。AIは、アプリケーションレイヤーでの管理の複雑性を持ち運ぶ一方で、優れた運用体制の構築が成功のカギになると警告しています。
マルチモデルの利用が主流化
レポートでは、AIモデルは多様化が進んでおり、特にOpenAIが今も63%のシェアを持つ一方で、Google GeminiやAnthropic Claudeの利用が著しく増加していることも触れられています。また、エージェントフレームワークの使用が前年比で倍増しており、システムの設計や運用の手法が変化していることが伺えます。
さらに、データの送信量も増加しており、一般的な利用のチームで1リクエストあたりの平均トークン数が2倍に、90パーセンタイルのチームでは4倍に達しています。これにより、ますます多くのデータを処理する必要が生じ、システムの負荷が増すことが予想されます。
システム規模の拡大による新たなリスク
AIシステムの規模が拡大するにつれ、その運用のコントロールが求められています。特に、障害の原因がシステム設計に起因するケースが増えており、分断されたワークフローや非効率なルーティングがリスク要因とされています。VercelのCEOであるギジェルモ・ラウフ氏は、次に起こるエージェントの障害は観測できないことが原因であると警鐘を鳴らしています。エージェントは、LLM(大規模言語モデル)によって制御フローが決まるため、単なる可視化ではなく、必須となるのです。
リー氏は、イノベーションだけでは不十分で、GPU利用状況やモデルの挙動、エージェントワークフローにおけるリアルタイムの可視性が必要であると強調します。
まとめ
Datadogの2026年版AI Engineering調査レポートは、AIがもたらす恩恵とともに、企業が直面する新たな課題を浮き彫りにしました。AIの導入を進める中で、運用の管理体制づくりがこれまで以上に重要になります。データの可視性と運用管理が確保されない限り、効率の良いAI活用は難しくなるでしょう。今後、企業はこの新しい時代にどう適応するかが鍵になりそうです。
このレポートは
Datadogの公式ウェブサイトでも確認できます。
Datadogの役割
AI時代におけるオブザーバビリティとセキュリティのリーディングカンパニーであるDatadogは、全体のテクノロジースタックを統合的に可視化し、システム管理の支援をしています。AIを活用したサービス展開を通じて、企業が迅速かつ信頼性ある意思決定を行える仕組みを提供しています。