IoT機器の台頭とセキュリティリスク
近年、IoT(Internet of Things)技術の急速な発展により、さまざまな分野で業務の効率化や新たなビジネスモデルの構築が進んでいます。特に製造業では、スマートファクトリーの実現に向けた取り組みが顕著であり、流通業においても在庫管理や顧客サービス向上を目的に多くのスマートデバイスが導入されています。2024年には世界中のIoT機器の数が420億台を超えると予測され、今後もその増加傾向は続く見込みです。
スマートデバイスの脆弱性
便利さを享受する一方で、スマートデバイスの普及はセキュリティリスクを引き起こしています。スマートデバイスは多くの機器やシステムと連携しているため、一度脅威が発生すると、数多くの機器に影響を与える可能性があります。実際、2016年に発見されたマルウェア「Mirai」は、Webカメラなどの脆弱なスマートデバイスを標的にして感染を広め、DDoS攻撃を引き起こしました。NICTER観測レポート2024によれば、「Mirai」とその亜種による感染は減少傾向にあるものの、現在も日本国内で一定数の感染機器が存在しています。また、全く新しいタイプのIoTボットの増加が報告されており、テクノロジーの進化に伴って脅威も多様化しています。
産業界における脅威の具体例
スマートデバイスの脅威は、産業界にも深刻な影響を及ぼしています。特に製造業では、工場の生産ライン管理や設備監視に多くのIoT機器が導入されています。これらの機器がセキュリティ対策を怠っていると、外部からの不正アクセスやデータ漏洩の危険があります。過去には、マルウェアがスマートデバイスを介して侵入し、生産ラインの停止を引き起こす事例も報告されています。このような事態は、生産の停滞や企業の信用失墜につながりかねません。
流通業や小売業においても同様のリスクが存在します。在庫管理やPOSシステムに多くのスマートデバイスが使用されていますが、これらのセキュリティ対策が不十分だと顧客情報の流出や、場合によっては食品廃棄の原因になることがあります。実際、大手小売チェーンではIoTセンサーがハッキングされ、冷凍庫の温度管理が操られ、大量の食品が廃棄される事態が発生しました。
セキュリティ対策の重要性
このように、スマートデバイスのセキュリティ対策は企業の信頼性や事業の持続可能性に大きく関わっています。基本的なセキュリティ対策を怠ることで、思わぬ被害が発生することがあるため、初期設定の見直しや不要な機能の無効化など日常的な対策が求められます。
NTTデータ先端技術の取り組み
株式会社NTTデータ先端技術は、これらの課題を解決するために「INTELLILINK スマートデバイス診断サービス」を提供しています。このサービスでは、企業のIoT機器が適切にセキュリティ対策が施されているかを診断し、必要な対策を提案します。診断においては多様な手法を用いて設定状況を調査し、ポートスキャンや認証機構のチェックを行います。
今後の展望
NTTデータ先端技術は、さらなるセキュリティニーズに応えるために、AIや機械学習を用いたリアルタイムでの脅威検出技術の開発や、他のセキュリティベンダーとの協力による包括的なエコシステムの構築を進めています。また、企業向けセミナーを行い、最新の脅威情報や対策を周知する教育活動にも力を入れています。最後に、海外市場への展開も視野に入れた取り組みが期待されています。これらの努力により、IoT技術が安心して利用できる環境の構築を目指しています。