日本企業におけるタフ・アサインメントの実態と課題
経営戦略コンサルティングファーム「ローランド・ベルガー」は、日本の上場企業における「タフ・アサインメント」に関する意識調査を行い、その結果を公表しました。調査は、200名のCxOや経営企画責任者を対象に実施され、企業の変革人材育成に向けた現状が浮き彫りになりました。
調査の背景と目的
タフ・アサインメントとは、変革人材を育成するために、本人の能力を超えた挑戦的な職務を意図的に割り当てることを指します。このような取り組みが必要とされるのは、急速に変化するビジネス環境や、経営の重要性が増す中で、企業が持続的に成長していくためには、変革を担う人材の教育が不可欠だからです。
調査結果の概要
調査結果からは、以下の4つの重要なポイントが明らかになりました。
1. タフ・アサインメントの実施状況
85%を超える日本企業がタフ・アサインメントを実施していると回答しています。これは、日本企業が積極的に変革人材を育てる取り組みを行っていることを示しています。しかし、実態がどうなっているかは別の問題となります。
2. 適切なアサインができている企業の割合
設問への回答の中で、適切に変革人材をアサインできている企業はわずか12%という結果が出ました。これは、アサインの判断において社内の事情や離職リスクなどを気にせざるを得ない現状を示唆しています。
3. 経営への関与の制限
さらに、タフ・アサインメントを受けた役職でも、経営の意思決定に関わる機会が制限されていることが多く、期待する効果が得られていないケースが報告されています。これにより、企業内での実績促進に偏った経験が増え、本来必要とされる変革を推進する力が育ちにくくなります。
4. 効果実感の違い
タフ・アサインメントを受けた場合、特に経営の意思決定に関与する「責任者」ポジションでの効果実感が高いことが分かりました。これは、責任者の立場で与えられた権限や機会が多く、実践的な学びが得やすいためであると考えられます。
調査から見えてきた課題
上述の調査結果を通じて、タフ・アサインメント制度にはさまざまな課題があることが指摘されています。
1.
内実と名目の乖離: 多くの企業がタフ・アサインメントを名目上は行っているものの、実際にはその効果が薄れている。
2.
経営への限定的関与: 経営層の意思決定にかかわる機会が限られており、ハイリスクな挑戦に踏み込むことができず、変革を遂げる人材の育成が阻まれている。
3.
偶発的な変革人材の出現: 書類上では変革人材候補とされていない人材からも、実際に「変革者」が生まれる可能性が高いこと。特に、課長職においては、より多くの偶発性が見られています。
結論として
ローランド・ベルガーの成長戦略や企業変革に関する成果は、今後も重要な課題を議論し続ける必要があります。調査を実施した田村誠一氏は、「社内事情から、タフ・アサインメントの運用が限定されている現状がある。企業はリスクを取る意識が求められ、真の変革人材を育成しなければならない」と述べています。このようなタフ・アサインメントを通じて、企業が本当の変革を勝ち取るためには、経営層による意思決定とサポートが不可欠であることが再認識されます。
今後の企業の成長には、このようなタフ・アサインメント制度がどのように活用され、具体的な成果が得られるかが重要な鍵となるでしょう。