手書き日記がもたらす睡眠の質向上の可能性
三菱鉛筆株式会社(東京都品川区)は、慶應義塾大学理工学部の満倉靖恵教授と協力して、手書きの日記が睡眠の質に与える影響についての実験を行いました。この研究は、筆記具の新たな価値を探求する一環として進められました。
背景
筆記具は一般的には“書く・描く”ための道具とされていますが、三菱鉛筆はその役割を超え、日常生活における様々な効果を認識しています。日記を書くことで、日々の出来事や感情を整理し、心を落ち着かせる可能性があると考えました。これが結果的に良質な睡眠をもたらすのではないかという仮説が生まれました。
良質な睡眠は、疲労感の軽減や認知機能向上に寄与するとされ、健康維持に重要です。この観点から日記を書く行為がどのように役立つのかを分析するための実験が行われました。
実験の内容
実験は2024年3月から6月の3カ月間実施され、就寝前の行動を次の3つに分類しました。最初と最後の2週間は「何もしない」、中間の1カ月は「アプリで日記を書く」、さらにもう1カ月は「手書きで日記を書く」という条件で比較しました。
睡眠中は心拍データが計測され、睡眠の質を国際基準に基づいて5段階に分類して評価しました。この評価は、深い睡眠を示すN3段階の割合を特に注視しました。
実験の結果
実験の結果、手書きで日記を書く場合のN3(深睡眠)の割合が最も高く、29%となりました。次いでアプリで日記を書く場合が20%、何もしない場合は12%という結果でした。このことから、手書きの日記をつけることで睡眠の質が向上する可能性が示されました。
考察
この実験により、手書きで日記を書くということが深い睡眠を促進する一因であることが確認されました。手書きの方がデジタルツールよりも効果的であることが分かり、この効果は疲労感の軽減や認知機能の向上にも寄与する可能性があります。
実験を踏まえたコメント
三菱鉛筆の研究開発センターはこの結果を受けて、日記を書くという身近な行為が睡眠に具体的な影響を与える意義深い発見であると述べました。デジタル化が進む中で、「手で書くこと」の価値を再評価する機会を提供できると考えています。
慶應義塾大学の満倉教授も、この研究が生体信号処理や睡眠メカニズムに関わる新たな知見を提供するものであると期待しています。今後も様々な研究を進め、社会の課題解決に貢献する意思を示しました。