近年、地球温暖化や気候変動への関心が高まり、各業界での脱炭素化が求められる中、三菱重工グループの三菱造船株式会社が、船舶から排出される二酸化炭素(CO2)を回収する新しい技術の開発に大きな一歩を踏み出しました。この度、日本海事協会から船上CO2回収システム(Onboard Carbon Capture and Storage system:OCCS)の基本設計承認(AiP)を取得しました。
AiPとは、認証機関が基本設計を審査し、安全性や技術要件を満たしているかどうかを確認するもので、今回の承認は三菱造船が取り組む大きな進展を示しています。OCCSは、船舶から排出される排ガスを浄化した後、CO2を回収し、液化・貯蔵する一連のプロセスを経て、脱炭素化の効果を持つソリューションとして注目されています。
三菱造船は、三菱重工業が陸上設備で培った豊富なCO2回収技術を生かし、船上でも利用可能なシステムを構築中です。このシステムにおいては、排ガスの前処理、二酸化炭素の液化、貯蔵、ハンドリングの各技術が組み合わされ、効率的に排出ガスからCO2を回収します。現在、同社は製品化に向けた開発を加速しているとのことです。
三菱重工グループ全体としてもエナジートランジションの事業強化を戦略的に進めており、三菱造船は造船を中心に、海事エンジニアリング技術を活用し、国内外の海事産業の発展に貢献することを目指しています。OCCSの開発はその一環であり、特に世界的に脱炭素化の急務が叫ばれる今、船舶からの温室効果ガス(GHG)排出削減に向け、積極的に取り組む姿勢を示しています。
さらに、三菱重工グループは1990年から関西電力と共同でCO2回収に関する様々な技術開発を行っており、これまでに18基のCO2回収プラントを納入しています。特に、「KM CDR Process™」や「Advanced KM CDR Process™」といった技術は、業界内でも高く評価されています。新たに改良された「KS-21™」は、従来の吸収液に比べ優れた再生効率を持ち、運用コストの低減にも寄与しています。
国際社会が温室効果ガス削減に向けた取り組みを一層強化する中、三菱造船の船上CO2回収システムは、持続可能な未来を実現するための鍵となる技術の一つです。今後の進展がますます期待される中、三菱造船や三菱重工グループの取り組みから目が離せません。