横浜の製造業・スリーハイの挑戦
中小企業の価値は従来、決算書や数字によって判断されがちでした。しかし、株式会社スリーハイは、その常識を覆し、価値を「見える化」する新たなアプローチに挑戦しています。2021年に同社は初めてサステナビリティレポートを発行し、次第に年次報告書「OMOU」へと進化。これにより、財務情報を公開し「伝える」から「つながる」への新たなコミュニケーションの形を提案しています。
スリーハイの背後にある理念
スリーハイは「地域とともに生きる」をテーマに地域貢献活動やSDGs達成に貢献する取り組みを続けてきました。しかし、これらの活動と本業である産業用ヒーターの関係性を説明するのが難しいと感じていました。社長の男澤誠氏は、そうした思いから、企業の「想い」を形にするために「OMOU」の制作に取り組むことを決定しました。
プロフェッショナルとの協力
制作には、社内メンバーだけでなく、ブランディングを手掛けてきたアートディレクターの臼井亮介氏や、社会的価値評価を専門とする今尾江美子氏も参加。彼らの専門知識がプロジェクトに深みを与えました。「OMOU」はただの活動実績を報告するだけでなく、企業がどのような想いを持ち、何を大事にしているのかを読者に伝えることを目指しました。
「OMOU」の誕生とその反響
「OMOU」の発行後、様々な反響が寄せられました。特に「読みやすい」「視覚的に理解しやすい」という評価が多く、イラストを多用したことが功を奏しました。イラストは視覚的に情報を伝えやすくし、関与が難しい情報も分かりやすくしました。
男澤氏は、金融機関からの評価も上がり、彼らがスリーハイに融資を行う際に優遇金利を提供するなど、具体的な成果が現れ始めています。
社内浸透の重要性
一方で、「OMOU」が社内にどれだけ浸透したかは別の課題でした。一部社員からは「伝わっていない」「共感できない」との声も上がりました。これを受け、社内勉強会を実施し、社長自らが各ページを説明することで、適切な活用法を模索しはじめたといいます。
中小企業としての情報開示の価値
今尾氏は、情報開示を通じてなぜその活動を行っているのか、つまり企業の背景にあるストーリーを伝えることが最も重要だと述べています。これにより、顧客や投資者は数字の背後にある「想い」に惹かれ、より深い理解を得るのです。臼井氏もまた、情報開示が広い視野をもたらし、企業活動に対する考え方を変える要因になると語りました。
今後、中小企業が自らの物語を語ることは、人的資源も経済的資源も集まりやすくなる時代であることを示唆しています。スリーハイの取り組みは、他の中小企業にとっても大いに参考となるでしょう。
最後に
スリーハイの経験から、中小企業が自らの強みを発信し、価値を見える化することがどれほど重要かが浮き彫りにされています。企業の「良さ」や「大切にしている価値観」を適切に外に伝えることで、他社との差別化が図れる時代となってきているのです。男澤氏は、この発信を形にするための努力が必要であると強調しています。
このように、スリーハイの事例は多くの中小企業にとって、企業をどう伝えるか、何を重要視すべきかに関する貴重なレッスンとなるに違いありません。