2024年TNFD開示の動向と日本企業の取り組み
公益財団法人世界自然保護基金ジャパン(WWFジャパン)は、このほど日本企業65社を対象に2024年度の自然関連財務情報開示(TNFD)についての調査レポートを発表しました。このレポートでは、現状のTNFD開示状況を分析し、各企業が抱える課題や今後の期待に目を向けています。
TNFDとは?
自然関連財務情報開示タスクフォース(TNFD)は、企業が自然環境への影響を考慮した情報開示を行うための枠組みとして設立されました。企業が持つ自然資本への依存や影響を評価し、その結果を透明に公開することが目的です。
調査の目的
今回の調査は、日本の企業がどのようにTNFD提言に基づいて情報を開示しているかを確認し、今後の参考となる事例を提供することを目指しています。特に2024年の開示から見える共通の傾向や課題を洗い出し、それをもとに企業がどのように改善を図ることができるのかを考察します。
2024年の開示の主な傾向
開示アプローチの明示
調査の結果、65社中13社が選択したマテリアリティアプローチを明確に定義していることがわかりました。これは、企業が自社の状況や特性を反映させた開示を行うための第一歩と言えるでしょう。
自然関連課題の特定
全社がコモディティや事業部門を特定し、自然との依存や影響を分析しているものの、場所に基づいた具体的なリスク・機会の評価は多くの企業にとってまだ課題です。具体的な分析を行う企業は限られていますが、これが今後の改善ポイントとなるでしょう。
ミティゲーションヒエラルキーに沿った取り組み
従来の取り組みとTNFDフレームワークの親和性が認められる一方で、企業全体でのマイナスインパクトの回避・軽減に向けたコミットメントを示す企業は限られています。全社戦略としての取り組みが求められます。
IPLCとステークホルダーへのエンゲージメント
先住民族や地域社会への影響についての分析が不足している企業が多い中、全ての企業が国際的な人権規範に賛同しています。具体的な取り組みやエンゲージメントの実施については今後の課題として残っています。
今後期待される取り組み
自社の特性を生かした分析
企業は、自社の事業活動がどのように自然に依存し、影響を与えるのかを詳細に分析することが重要です。特にバリューチェーンの各段階での影響を具体的に明示することが求められます。
事業モデルの変革
特定されたマイナスインパクトを回避・軽減するためには、既存の事業モデルをどのように変革かけるかを考える必要があります。社内のコミットメントを得て、全社的に取り組みを始めることが期待されます。
自然への具体的な影響の把握
自社活動が具体的に影響を与える地域を特定し、それに基づく分析を行うことが求められます。これにより、近隣住民や先住民への影響をより具体的に把握することができるでしょう。
企業の開示事例
この調査レポートでは、今後の開示の参考になるような企業の具体例も紹介されています。
- - 住友林業株式会社の優先地域の特定
- - 花王株式会社のバリューチェーン上流のトレース状況
- - 王子ホールディングス株式会社の測定指標とターゲットの設定
- - 株式会社コーセーの依存やインパクトの分析
- - 花王株式会社のパーム調達に関する苦情受付体制
WWFジャパンの見解
WWFジャパンの自然保護室金融グループの小池祐輔オフィサーは、日本企業のTNFD開示を高く評価しつつも、表面的な情報開示に留まる企業が多いことを指摘しています。TNFDは単なる開示にとどまらず、ビジネスモデルの根本的な変革を促進する機会であるべきです。そこで重要なのは、商流のトレーサビリティの確保や自然環境の状態把握など、多岐にわたるノウハウの構築です。
このように、2024年が向かう先にはより具体的で実効的な取り組みが求められています。今後、先進企業が築いたモデルを基に、さらに多くの企業が学び合いナチュラルポジティブな社会の実現に向けて歩みを進めることを期待したいです。