岡山大学が解明した地球マントルの謎
岡山大学と高輝度光科学研究センターによる共同研究が、地球マントルの深部に存在する不思議な溶融層、その成因を解明しました。この研究成果は2025年5月9日に発表されたもので、国際的な科学者チームの協力によって実現しました。
研究の背景と目的
地球の内部構造については多くの研究が行われてきましたが、マントルの410キロメートルの深さにある不連続面上に存在する2重の低速度層についてはその成因が謎に包まれていました。この問題を解決するため、岡山大学の芳野極所長とそのチームは、マントルを構成するケイ酸塩物質に水を加え、これを高圧の状態で溶かすという実験を行いました。
研究方法と発見
研究チームは、高圧下で水分を含むケイ酸塩溶融物の粘性を測定し、重い球を落下させることでその挙動を観察しました。その結果、溶融物の粘性が異常に低いことが判明しました。さらに、マントルの対流によって上昇する部分に水を含んだ溶融物が存在すると、410キロメートルの不連続面より上で2重の低速度層が形成されることがモデル計算により示されました。
この発見は、地球深部の水循環やマントルのダイナミクスに関する理解を深めるだけでなく、地球科学の新たな地平を切り開くものです。
研究チームについて
本研究はNature Communications誌にも掲載されており、岡山大学出身のロンジャン・シェ博士が中心となっています。また、日英仏米の国際的な科学者が参加するチームが結成され、地球の深部に関する新たな知見が得られました。
マントル研究の重要性
地球の内部構造の理解は、地球科学における基礎的な研究であり、マントルの動きは地球のプレート運動や火山活動に深く関与しています。マントルの化学的な進化や水循環に関する知見は、地球の気候や環境に影響を与える要素でもあります。
芳野極所長のコメント
芳野教授は、岡山大学惑星物質研究所で博士の学位を取得した学生との共同研究からこの画期的な成果に至ったことを喜ぶとともに、研究者を目指す若い世代へのメッセージを伝えました。「一緒に科学の面白さを体験しませんか?」と呼びかけています。
この成果が、今後の地域や地球環境の持続可能性に系統的な知識を提供する重要な礎となることを期待しています。
研究資金と実施機関
この研究は日本学術振興会やRCUK grantsなどの支援を受けており、岡山大学の高度な研究インフラが活かされています。特に、SPring-8という先端的な研究施設の高輝度放射光を用いた実験は、気になる地球深部の状態をリアルタイムで観察できる貴重な機会となりました。
今後の発展に乞うご期待です。