自治体の起業支援の現状を探る
新たなビジネスの創出が期待される中、全国の自治体が起業支援にどのように向き合っているかを調査した結果が発表されました。株式会社ツクリエが運営する「起業支援ラボ」が実施した「全国自治体の起業支援に関する意識調査」では、全国の1,741自治体のうち、94.9%が「自治体は起業支援の施策を積極的に推進すべき」と回答しました。この数値は昨年度比で1.7ポイント増加し、地方自治体の中で起業支援の関心が高まっていることが明らかになりました。
調査の背景と目的
この調査は、スタートアップ育成5か年計画の後半に差し掛かるタイミングで実施されました。起業活動やスタートアップ支援の現状を可視化し、官民の役割および地域間での違いを理解するために行われたものです。調査項目には、起業活動の現状や起業支援施策、スタートアップの育成状況という3つの観点が加えられ、職員がどのような課題を感じているのかも浮き彫りにされました。
課題感と現場の声
調査結果によると、全体の56.3%が自自治体の起業支援施策は「不十分」と回答しています。特に「起業支援に必要な知見やノウハウを持つ職員が不足している」との声が多く、中には「業務が多忙で職員数の確保が難しい」「予算の確保が困難」といった課題も指摘されています。
また、スタートアップの存在率に関するデータでは、1%程度のスタートアップが存在するとの回答が最も多く、過半数は「把握していない」と答えています。この状況から、スタートアップの定義が不明確であることが障害となっていることが見えてきます。
スタートアップへの期待
ところで、スタートアップに対する期待は非常に高く、81.3%の自治体が「スタートアップに地域課題の解決や経済効果を期待する」と回答しました。特に人口減少に直面している地域では、これが地域経済の成長エンジンとなる可能性が期待されています。例えば、人口規模が50万人以上の自治体では、100%がスタートアップが生まれる兆候を感じていると回答したことから、人口規模が起業支援の効果に大きな影響を与えていることがわかります。
調査を監修した専門家たちも、全国の自治体が抱えるこれらのデータを踏まえた上で、起業支援策をより実効性のあるものに整備する必要性を訴えています。観光、地域課題の解決、雇用創出といった観点からも、スタートアップ支援の重要性は一層増しているのです。
調査概要
調査の対象は、地方自治法に基づく普通地方公共団体として定められた1,741の自治体です。調査は2025年の2月12日から3月31日までの約2か月間かけてWeb上のフォーム形式で実施され、有効回収率は16.8%に達しました。この結果をもとに、今後の起業支援施策の具体化や消費者の意識向上が図られることが期待されます。
この調査や結果を通じて、各自治体が持つ問題意識や起業支援の実態についてさらなる理解が深まることに、私たちも期待を寄せています。