赤石山地に新たな地質図が公開される
長野県下伊那地域に位置する赤石山地の詳細な地質情報を示す5万分の1地質図『大河原』が、国立研究開発法人産業技術総合研究所(産総研)から刊行されました。これにより、中央構造線に関連した地質の活動が明らかにされると共に、地域の地質災害リスクを低減し、インフラ整備の基礎データとしての有用性が高まることが期待されています。
障害を未然に防ぐための基礎資料
従来、赤石山地の地質図は詳細に整備されておらず、地域密着型の道路整備が進む中で、地質情報の不足が問題視されていました。このような背景を踏まえ、産総研では2017年から2022年にかけて、詳細な地質調査を行い、新たな地質図を作成しました。赤石山地は、日本で最も早い速度で隆起しており、その急峻な斜面は近年の豪雨によって土砂崩落を引き起こし、結果的に重要な交通路である国道152号線がしばしば寸断されているという現実があります。
IR地域では特に、1961年に発生した三六災害では42名の犠牲者を出すなど、地質災害が地域住民の日常生活に多大な影響を及ぼしています。こうした恐れを減らすためにも、地質情報の整備とその利活用が不可欠です。『大河原』地質図は、中央構造線に沿った複雑な地質の実態を詳細に描写し、地域のリスクマネジメントに役立つことを目的としています。
中央構造線の活動について
本図幅では、中央構造線に関連した鹿塩せん断帯の分布や、地すべりが発生しやすい超苦鉄質岩類の詳細についても言及されています。これらの情報により、地域特有の地質災害リスクを具体的に把握することが可能となります。中央構造線は日本の基盤地質構造を二分する重要な断層であり、特に赤石山地周辺ではその歴史と動態が安全対策において重大な要素となります。
インフラ整備への利用と今後の展望
また、現在、リニア中央新幹線の南アルプストンネルに関連した大規模開発が進行中であり、『大河原』地質図はこのようなインフラ整備においても基礎資料としての役割を果たすことが期待されています。トンネルやダム、道路などの維持管理には、詳細な地質情報が必要であり、この地質図の公開は社会的な意義を非常に高めるものです。
本地質図は2023年3月14日より、産総研地質調査総合センターのウェブサイトからダウンロード可能であり、一般向けに購入もできます。これによりより多くの人々が地質情報を利用し、安全で持続可能な地域プランを策定するための重要な一歩になることを願います。地域の自然環境や人々の安全を守るためにも、この新しい地質図が活用されることを期待しています。