知的障害者の栄養状態と口腔ケア
公立大学法人九州歯科大学が行った研究にて、知的障害を持つ成人における口腔ケアの拒否が、栄養リスクに密接に関連していることが示されました。この研究は、福岡県北九州市の九州歯科大学口腔保健学科の泉繭依講師らの研究グループが主導し、熊本県の障害者施設と協力して実施されました。
研究の背景
知的障害のある成人は、口腔ケアを適切に受けることが難しい場合があります。このため、口腔ケアの拒否は医療現場でよく見られる現象ですが、この拒否がどのように栄養状態に影響を及ぼすかについてはあまり知られていませんでした。
研究の目的と方法
本研究では、知的障害を持つ成人55人を対象に日常ケアの中での「口腔ケアの拒否」と栄養状態の関連を調べました。具体的には、口腔ケアの拒否を示したグループと栄養が正常なグループを比較し、影響を評価しました。
- - 対象者: 知的障害のある成人55人(男性56.4%、中央値57歳)
- - 方法: MNA-SFを用いた栄養評価
研究の結果
研究結果では、栄養リスクがある群では口腔ケアの拒否が50%に達する一方、栄養状態が正常な群ではわずか16.2%でした。また、年齢や性別を考慮しても、口腔ケアの拒否が栄養リスクと独立して関連していることが示されました(オッズ比9.23、95%CI 1.10–77.33)。これにより、口腔ケアの拒否は栄養リスクを示す重要なサインであることが明らかになりました。
口腔ケア拒否がもたらす社会的意義
特に介護や支援を行う現場において、「歯みがきを嫌がる」「口を開けない」といった拒否は一般的に見られますが、本研究によると、これが栄養リスクを早期に察知するための指標となる可能性があります。口腔ケアに対する拒否が見られる際は、手技の工夫に加え、適切な栄養スクリーニングや多職種連携が促進されることが期待されます。
研究者のコメント
泉繭依講師は、「日常的によく見られる口腔ケアに対する拒否が、栄養状態と関連している可能性を示したことは重要です。今後は拒否が見られた場合、体調や食事量の変化にも注意を払い、適切な支援を行うことが重要です。」と述べています。
今後の展望
本研究は、健康管理の観点から、知的障害者の口腔ケアの重要性を再認識させるものであり、今後の介護福祉分野において新たな指針となることが期待されています。特に、栄養リスクを意識しつつ、口腔ケアの精神的負担を軽減する工夫や、効果的な支援方法の開発が求められています。
このように、口腔ケアの拒否が栄養状態に与える影響を理解することは、健康で幸せな生活をサポートするために非常に重要です。