グローバルヘルス基金が熱帯病研究に17億円の投資を発表
公益社団法人グローバルヘルス技術振興基金(GHIT Fund)は、顧みられない熱帯病(Neglected Tropical Diseases: NTDs)を対象に、住血吸虫症の診断薬および治療薬の開発に約17億円の投資を決定しました。この措置は、困難な状況にある地域で感染症対策を強化し、患者の健康を守ることを目的としています。
住血吸虫症の現状
住血吸虫症は、世界中で約2億5,000万人が感染している重篤な疾患で、特にアフリカがその90%を占めています。この病気は、感染した淡水に皮膚が接触することで広がり、寄生虫が体内に侵入します。主要な種としては、尿生殖器系に寄生するビルハルツ住血吸虫と、消化器系に寄生するマンソン住血吸虫がありますが、現在の診断薬は感度や品質が低く、正確な感染状況の把握が難しいという問題があります。
新たな診断薬開発の取り組み
GHIT Fundは、この課題に対応するため、米国サンディエゴを拠点とする非営利団体や関連研究機関、特に長崎大学、ケニア中央医学研究所、医学生物学研究所と連携し、住血吸虫症の診断薬開発プロジェクトに約7.8億円を投資します。このプロジェクトでは、過去の研究を基にマンソン住血吸虫に特化した迅速診断検査の開発が行われるほか、ビルハルツ住血吸虫を対象とする新しい血清学的迅速診断検査も進められます。
これらの診断薬は、コストが低く、使用しやすいため、感染症の拡大を防ぐだけでなく、集団薬剤投与終了の判断や疾患の追跡調査にも利用されることが期待されています。
追加のプロジェクト投資
さらに、GHIT Fundは以下の3つの研究開発プロジェクトにも合計約9.3億円の投資を行います。1つ目は、VLP Therapeuticsと長崎大学によるデング熱ワクチンの第I相臨床試験、2つ目は、エーザイ株式会社とMMVによるチクングニアウイルスに対するスクリーニングプロジェクト、3つ目は、DHNDiと塩野義製薬によるシャーガス病に対するスクリーニングプロジェクトです。
これらの投資によって、GHIT Fundはこれまでに35件のプロジェクトに対して投資を行い、累積投資金額は約375億円に達しています。これにより、さまざまな熱帯病と闘うための新しい治療薬の開発が期待されています。
GHIT Fundの役割
GHIT Fundは、日本政府、製薬企業、国際的な非営利組織が協力して設立したもので、最貧困層の健康を守るために活動しています。感染症の新薬、ワクチン、診断薬の開発を促進し、国内外の研究機関との連携を強化しています。
今後もGHIT Fundの取り組みが、熱帯病に苦しむ多くの人々に希望をもたらすことが期待されます。また、新薬の開発が進むことで、これらの病気の影響を受ける地域における健康状況の向上が期待されています。