人類学者藏本龍介と新たな仏教のかたち
2025年2月25日、著者・藏本龍介氏の新著『仏教を「経営」する実験寺院のフィールドワーク』が発売されました。彼は2006年からミャンマーで出家し、現地の仏教文化とその実態を深く掘り下げ、帰国後には京都に新たな寺院を設立しました。本書では、彼が体験した仏教の理想と現実、そして現代社会の中での仏教のあり方を探求しています。
東南アジアの仏教文化と出家生活
藏本氏は、仏教が葬儀や美術、観光の一部として日本で捉えられているのに対し、東南アジアではいまだにブッダの教えが生き生きと作用していることを伝えています。特にミャンマーでの出家生活は、理想的な出家者としての生活を体験する貴重な機会となりました。著者は、布施という形で生きることで、仏教が持つ力を再認識したのです。
新寺院の設立と挑戦
帰国後、藏本氏は日本における仏教の新たな形を模索し、京都で「実験寺院」を設立しました。しかし、理想と現実のギャップに直面し、寺院の運営が思うようにいかないことに苦しみます。本書の第一章では、彼が設立した「タータナ・ウンサウン寺院」の挑戦について記されており、在家者による寺院経営や一般の人々との関わりがどのように形成されるかを探っています。
布施の哲学と共同体の形成
第二章「ダバワ瞑想センター」では、布施を受け取ることの重要性が論じられています。この瞑想センターでは、瞑想と社会福祉がどのように結びついているのか、また善行がコミュニティの中でどのように浸透しているのかが描かれています。ここでの教訓は、仏教徒が善行を通じてどのように互いに支え合うかという点にも焦点を合わせています。
日本における「即身成仏」の実現
最終章では、実験寺院「寳幢寺」における「即身成仏」という理想を取り上げています。現代日本に即した仏教の形や、檀家制度からの脱却といった運営の挑戦が議論されており、藏本氏は現実的な運営の中で理想をどう実現するかを模索しています。著作全体を通して、仏教の現代的な可能性が描かれており、一気に読み進められる内容となっています。
読者へのメッセージ
本書は、現代における仏教の役割とその再発見を促す内容となっており、仏教に興味のある方はもちろん、社会や宗教の未来に関心を持つすべての人にとって、考えるきっかけになる一冊です。
ぜひ手に取って、藏本氏の体験した仏教の深い世界を覗き込んでみてください。