蟹江杏の小説『あの空の色がほしい』が注目される理由とは？

2025年度中学入試で最も多く出題される作品として話題をさらっているのが、画家で作家の蟹江杏による小説『あの空の色がほしい』です。この作品は彼女の初めての小説であり、2024年5月に刊行された後、すでに重版される運びとなりました。特に、教育現場での扱いが高まっていることが、大きな話題となっています。

小説の概要と魅力

『あの空の色がほしい』は、学校で周りと馴染めずにいる主人公・マコが、非凡な芸術家であるオッサン先生との出会いを通じて成長していく物語です。マコは絵を描くことが好きで、時に孤立感を抱えながらも、オッサン先生との交流を通じて自分自身を見つけていく姿が描かれています。これらの要素は、読み手の心に響く自己肯定感の高まりや、他者への理解を促す内容となっています。

この小説を読んだ著名人たちも、その感動を口にしています。作家の落合恵子は、「群青色の色鉛筆が、すきになった」と称賛し、彫刻家の吉田穂積も「最後の章では涙が溢れそうになった」と述べるなど、多くの読者に深い印象を与えています。

教育現場での注目度

2025年度の中学受験では、多数の名門校でこの作品が出題されています。大妻、学習院女子、慶應義塾湘南藤沢など、著名な中学校がこの小説を選んでいる点が、作品の価値を示しています。一部の教育関係者からは「現代版『窓ぎわのトットちゃん』」と称され、時代を超越した普遍性と共感性を備えた作品として位置づけられています。

作品のテーマとメッセージ

小説は、単に子ども向けの物語にとどまらず、感性や想像力を引き立てるメッセージが込められています。「自由」とは何か、どう生きるべきかを考えさせられる内容は、今の時代にますます共鳴するものです。蟹江さん自身がアートを通じて社会に貢献する姿勢も作品に色濃く反映されています。

蟹江杏とは？

蟹江杏は東京都出身の画家であり作家です。自由の森学園を卒業し、ロンドンで版画を学んだ彼女は、個展を多数開催し、数々の作品が評価されています。著書には『杏と世界』や受賞歴のある絵本が含まれ、幅広い層に対してアートの魅力を伝える活動に取り組んでいます。また、NPO法人3.11こども文庫の理事長として、被災地の子どもたちに絵本や画材を届ける活動にも力を入れています。