AIが解き明かすシカの秘密:鳴き声から行動パターンを読み解く
京都先端科学大学工学部の沖一雄教授らの研究チームは、シカの鳴き声を分析することで、その行動を効率的に評価できる革新的な手法を開発しました。この手法は、従来の調査方法に比べて、自然環境への影響を最小限に抑えながら、シカの行動を詳細に把握できる点が大きな特徴です。
音響データから行動を読み解く:AIの活用で効率性と精度が向上
研究チームは、シカの鳴き声を含む音響データを収集し、AIによる機械学習を用いて分析しました。特に、ResNet50、MobileNetV2、EfficientNet-B2といった深層学習モデルを組み合わせることで、従来の手法に比べて、より高精度な分析を実現しました。
多様な鳴き声:環境への適応能力を示す
尾瀬国立公園と三重県多気郡多気町での実証実験では、シカが環境によって鳴き方に違いがあることが明らかになりました。例えば、時間帯や鳴き声の種類によって、シカの警戒や求愛といった行動パターンを推測することが可能になりました。この結果は、シカがそれぞれの環境に適応したコミュニケーション方法を用いていることを示唆しています。
農作物被害対策への貢献も期待
シカの鳴き声分析によって、シカの行動パターンを把握することで、農作物被害を減らすための対策を立てることも期待されています。例えば、防護柵の設置場所や時期を最適化することで、より効果的な被害対策が可能になるかもしれません。
未来の野生動物管理に貢献:人と動物の共存に向けて
本研究は、AIを用いた音声分析技術が、野生動物の行動理解や保全に貢献できることを示す重要な成果です。今後は、より多くのデータを集め、さらに精度の高い分析を行うことで、シカと人間の共存を実現するためのより効果的な対策を開発していくことが期待されます。
研究成果の発表
本研究成果は、生態学専門誌「Ecological Informatics」に掲載されました。
論文タイトル: Ensemble Deep Learning and Anomaly Detection Framework for Automatic Audio Classification: Insights into Deer Vocalizations
著者: Salem Ibrahim Salem
, Sakae Shirayama, Sho Shimazaki, and Kazuo Oki
DOI: 10.1016/j.ecoinf.2024.102883